研究計画


テーマ

「沈み込み帯における不均一応力蓄積過程と大地震の震源過程との関係の解明」

 

研究目的

地震サイクルの研究によって,同一地域で繰り返し発生する地震は,規模・破壊領域において固有の特徴を持っていることが明らかになりつつある.これらの固有の特徴は,不均一な応力蓄積に関係している可能性が高い.日向灘や三陸沖では,地震の繰り返し間隔が比較的短いため, 1960年代に発生した大地震の震源域で再び地震が発生しており,2世代にわたる詳細な震源過程を明らかにすることができる.一方で,同地域では,GPS観測網の整備によって,地震発生前後の地震カップリングの時空間変化をモニタリングすることができる.本研究では,これらのことを結びつけることにより,同地域で発生する大地震の震源過程の特徴,地震発生前後の応力蓄積・解放過程,断層の強度回復過程を明らかにした上で,プレート間の不均一な応力蓄積と大地震の発生過程との関係について解明する.

 

研究内容

  1. 日向灘や三陸沖をテストフィールドにして, M6.5以上の大地震の震源過程を求める.ここで地震時に大きくすべる領域(アスペリティ),破壊停止領域(バリア)の空間分布を明らかにし,「一つの地震で観測されたバリアはすべての地震の動的な破壊伝播を妨げているか?,一つの地震で観測されたアスペリティはいつも大きくすべる領域なのか?」という疑問を明らかにする.さらに,解析で求められた断層パラメターと地震活動分布よりプレート形状を推定し,テストフィールド全体の三次元的なプレート構造モデルを構築する.その上で,解析により得られたアスペリティ・バリアの空間分布とプレート構造との関係について明らかにする.また,本震によって引き起こされる空間的な応力変化と余震の震源パラメターを比較することにより,本震と余震の因果関係を明らかにする.
  2. 日向灘や三陸沖で発生した地震で,国土地理院による高密度GPS観測ネットにより,地震発生後に準静的な余効変動が観測されている.この余効変動を解析することにより,詳細な余効すべりの空間分布と時間変化を明らかにする.さまざまな研究によって,余効すべりが顕著に起こる領域と地震時すべりが起こる領域は異なるすべり摩擦特性を持つことが指摘されてきた.一般に,余効すべり領域は安定すべりを起こす領域で,地震時すべりを起こす領域は不安定すべりを起こす領域と考えられている.したがって本研究では,余効すべり領域の空間的な位置を明確にしたうえで,同地域の地震活動,大地震の震源過程と比較することにより,「余効すべり領域が本当に安定すべりのみを起こす領域なのか?」という疑問を解明する.また,余効すべり分布の時間変化を調べることにより,地震後の準静的応力解放過程と断層の強度回復過程をモニタリングする.
  3. GPSデータを基に,プレート間の地震カップリングの時空間分布を求める.その上で,地震時に大きくすべる領域と破壊停止領域の空間分布と比較することにより,「アスペリティとバリアにおける応力蓄積過程はどのように異なるのか?」という疑問を解明する.また,プレートの沈み込み角度の変化領域,プレートの断裂帯,余効すべり領域ではどのような特徴的な応力蓄積過程が存在するのか明らかにする.
  4. 解析から推定されるプレート間のすべり摩擦特性の空間分布を使用したモデルを構築してシミュレーションを行う.その上で,観測から求められた応力蓄積・解放過程と比較検討することにより,「プレート間のすべり摩擦特性の不均一空間分布は応力蓄積過程にどのような影響を与えるのか?,プレートの形状は応力の蓄積過程にどのような影響を与えるのか?」という疑問点について議論する.
  5. プレートの形状からくる不均一な応力蓄積過程と,すべり摩擦特性からくる不均一な応力蓄積過程とを区別した上で,これらの不均一な応力蓄積過程と大地震の震源過程の関係について議論する.

 

 

本研究の特色・独創的な点

 

不均一な応力蓄積と大地震の震源過程の関係に着目した研究.

不均一な応力蓄積過程と大地震の震源過程の関係を明らかにした研究例は希である.本研究では,両者の関係を明らかにできる地域に着目して解析を行うことにより,両者の関係を解明することができる.

2世代にわたる大地震の詳細な震源過程の解明.

過去の地震と最近の地震を,地震波形,測地データを用いて解析し,その結果を比較することにより,同一地域における大地震の震源過程の特徴を明らかにすることができる.従来行われてきた文献的な手法で地震サイクルを研究する場合と異なり,詳細な震源過程の再現性の評価,アスペリティ・バリアの空間分布の解明を行うことができる.

沈み込むプレートの形状と震源過程との関係の解明

最近の海底地震計の観測等によって,日向灘や三陸沖における沈み込むプレートの形状等が明らかになりつつある.私は修士時代に,これらの構造と海溝型大地震の震源過程に因果関係がある可能性を指摘した.今後より多くの海溝型大地震を解析し,定量的な関係を明らかにしたい.

動的な破壊現象(時定数,約10秒)から準静的な破壊現象(時定数,約一年)までの,幅広い帯域での現象の解明.

今まで地震時の動的な破壊現象と地震後の準静的な破壊現象は,別々のグループによって解析されており,統一的に解析された例は希である.本研究は,動的な破壊現象と準静的な破壊現象を統一的に解析することにより,アスペリティ・バリアの空間分布とそのすべり摩擦特性まで,明らかにすることが可能である.

 


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