広帯域地震観測網(TERRAscope)内でおきた地震の解析

                菊地正幸    金森博雄
       (横浜市大文理)(カリフォルニア工科大)

           Analysis of an Earthquake Source within
            a Local Network of Broadband Seismographs

                 Masayuki Kikuchi (Yokohama City University)
                 Hiroo Kanamori (California Insitute of Technology)


1.はじめに  1991年6月28日カリフォルニア州バサデナ市の近くで小さい地震が起こった。 南カリフォルニア地震観測網やNEICによる震源情報は次の通り。 発震時刻 14:43:54.5 GT 震央 34°14.7′N, 118°0.1′W 深さ 11 km 落下物などによる死者2名のほか、バサデナ市で壁が剥れ落ちるなどの被害が出た。  この地震の震央は、最近整備されたばかりのカリフォルニア工科大のダイヤル アップ式広帯域地震観測網(通称"TERRAscope")のど真中に位置する(図1)。 そのため、震源の研究にとって大変都合のよい地震記録のセットが得られた。 また、ダイヤルアップ式の特性が生かされ、地震発生後まもなく多くの研究者が この記録を手にすることができた。 2.TERRAscopenoの記録の解析  2通りの方法で解析した。1つは、メカニズムを固定(図2のP波初動解)した Forward Modelling、もう1つは各Station毎のインバージョンである。Green関数の 計算にあたっては、水平4層構造で、Takao & Mikami(1985)のプログラムを用いた。  前者による地震モーメントは、3.1±1.1×1024dyn.cm, 震源時間関数のパルス幅は 1.2s, 後者では、それぞれ、2.4±0.6×1024dyn.cm, 1.2s と得られた。 また、後者でのメカニズム解の1例を図3に示す。 3.遠地実体波記録のインバージョン  5つの観測点の実体波(P,SH)をKikuchi&Kanamori(1991)の方法で解析した。 得られた地震モーメントは2.6×10dyn.cm, 震源時間関数のパルス幅は1.2s, メカニズムは図4のように得られた。 4.おわりに   以上のように、TERRAscopeの近地地震記録の解析結果と遠地実体波による解析 結果とは量的にも質的にもほぼ満足のいく一致が見られた。  今回の地震は、広帯域地震観測網がローカルな地震の研究に大変有用であるこ とを示すとともに、いわゆる、"リアルタイム地震学" が現実的な目標になりう ること、また、そのための課題の1つが、Near-Field の合成記録をいかに速く計 算できるかであることを示唆した。 Kikuchi&Kanamori, 1991.MSSA(in print) Takeo&Mikami, 1995.気象研報告