YCU地震学レポートNo.35 Dec.30,94
12月28日 三陸はるか沖地震の解析
12月28日夜,三陸沖を震源とする大地震が起こりました。震度�困魑�録
した八戸では,パチンコ店の1階部分が壊れ,2人が下敷きとなり死亡したほ
か,青森県を中心に負傷者が100人を超えました。
電子メールを通して送られてきたHRV(ハーバード大学)及びUSGS(
アメリカ地質調査所)の震源速報は次の通りです。
震央 深さ Mw 走向 傾斜 すべり角
HRV 40.41 143.12 34km 7.7 184 15 70
USGS 40.212 144.012 3 7.7 174 11 57
ほぼ純粋な縦ずれ型の低角逆断層です。
当方の解を図1に示します。IRISの広帯域地震計記録による遠地実体波
(P波&SH波38個)を用いました。初めに,単震源を仮定して最適のメカ
ニズムと震源の深さを決め,次に,メカニズムと断層面を固定して多重震源の
時空分布を求めたものです。その際,2つのP波節面のうち低角面を断層面に
とりました。
分解能はよくありませんが,震源の拡がりが 100x50km^2 程度であることや
すべり方向に沿って震源が並んでいることがわかります(余震が東西に広がっ
ていることと大変よく一致します)。
主な震源パラメタは以下の通りです。
メカニズム (走向,傾斜,すべり角)=(164,22,55)
地震モーメント Mo=3.6x10^27 dyne-cm (Mw=7.6)
主破壊の破壊継続時間 T=37s
破壊面積 S=100x50 km^2
くいちがい D=Mo/μS (μ=3.7x10^11dyne/cm^2:剛性率)��2.0m
応力降下 Δσ=2.5Mo/S^1.5=26 bar
メカニズムは,低角面の走向を除いては,HRVやUSGSの解と基本的に
一致します。一般に,遠地実体波解析では低角面の走向は決まりにくいので,
この程度の誤差はやむを得ません。当方の解は1968年5月十勝沖地震のメ
カニズム解とほぼ同じです(図2参照)。
主破壊の震源時間関数の継続時間(T)は,10月4日の北海道東方沖の場
合(40秒)より数秒小さいだけです。モーメントの総量が東方沖のそれより
1桁小さいことを考えると,今回の地震ではモーメント密度(=応力降下)が
1桁ほど小さかったことがわかります。このような違いは,プレート間すべり
とプレート内破壊の違いを反映していると考えられます。
かくして,今回の三陸はるか沖地震は太平洋プレートが東北日本(北米プレ
ート)の下に潜り込むプレート間地震であったと推測されます。
もちろんこれで万事がうまく解決した訳ではなく,むしろ新たな課題が浮か
び上がったと言えます。すなわち,今回の地震は
(1)68年十勝沖の割れ残し なのか
(2)68年十勝沖規模への前段 なのか
(3)68年十勝沖規模の繰り返しの1つ なのか
ということです。この付近のプレート収斂速度が約10cm/年であることか
ら,68年以降の26年間で,2mのくいちがいに相当する歪みは十分蓄積さ
れ得ます。したがって(1)は考えにくい。とすると(2)か(3)となるの
ですが,はたしてどうでしょうか。
もう1つ興味あることは,11月14日のフィリピン・ミンドロ島地震の津
波との比較です。この地震は Mwが7.1の横ずれ型であったにもかかわらず局所
的に大きな津波の被害があったということで注目されました。しかしYCUレ
ポート#33で触れたように,断層すべりの上下動を計算すると,1.6m と結構大
きな値となり,局所的に高い津波が生じてもおかしくありません(地震研究所
阿部教授より貴重なコメントを頂きました)。これに対し,今回の断層すべり
の上下動成分は
D sin 55°sin 22° = 0.61 [m]
となります。したがって波源域での海底変動に関するかぎり,あまり大きな津
波の励起はそもそもなかったのかもしれません。