YCU地震学レポートNo.27 Feb.17,94 94年1月から2月にかけての地震の解析と うるう秒補正作業の報告
今回は以下の4つの地震をとりあげます。 1)1月11日 ペルー・ボリビア国境の深発地震 2)1月17日 南カリフォルニア・ノースリッジ地震 3)2月8~10日 千葉東方沖群発地震 4)2月16日 スマトラ島地震 4)以外は「速報」の意味が全くありませんが,地震学的には,それぞれ, ちょっと興味あること(よくわからないこと)が含まれています。 1。ペルー・ボリビア国境の深発地震 QEDによる地震諸元は次の通りです。 発震時 94/01/10 15:53:50 GT 震央 13.1S 69.2W 深さ 600km マグニチュードmb 6.3 この付近では1963年8月15日に,深発地震としては世界でも最大クラ スの地震が起こっています。その昔,深尾氏(現東大地震研究所々長)と共同 で,その地震の震源過程を調べたことがあります(Fukao & Kikuchi,1987, Tectonophysics,144,231-247)。その震源パラメターは以下の様です。 震央 13.8S 69.3W 深さ 593km Mw=7.8 実は,今回の地震の波形を見たとき,すぐ,それが63年地震の震源時間関 数とよく似ていることに気がつきました。図1にその比較を示します。上が今 回の地震の遠地観測点(SJG:プエルトリコ)の記録(変位),下が63年 地震の震源時間関数です。 また,今回の地震について,地震モーメント(Mw=6.9)を考慮して縦軸を モーメント速度に換算し,63年の地震と同じスケールでプロットしたのが, 下図の枠の中です。 今回の地震が,63年地震の初期破壊1個分に相当することが良く(良過ぎ るくらい)わかります。いずれ将来,63年クラスの深発地震が起これば,そ の広帯域地震記録が様々な事柄を教えてくれるでしょう。 2。南カリフォルニア・ノースリッジ地震 これについては,すでに新聞その他でいろいろと報じられています。最大地 動加速度が上下動でも1gを超えたとか,マグニチュードが6.6から6.8に変え られたとか,あるいは,地表の地震断層が見つかっていないとか(昔は,断層 が見つかるとニュースになったのが,今では断層が見つからないことが話題に なるようです)。 遠地実体波(P波)のインバージョンの結果を図2に示します。メカニズム のほぼ等しい3つのサブイベントから成ります。サブイベント①は少しぎくし ゃくしていますので,これ自身さらにいくつかに分かれるのかもしれません。 ③は地下構造の影響から来る見かけの震源の可能性があります。得られた震源 パラメターは次の通りです。 (φ,δ,λ)=(133,42,105) φ:走向 # Mo T h Mo/T**3 δ:傾斜 x10**25 cgs sec km x10**23 cgs λ:すべり角 ① 9.2 7.5 16 2.1 Mo:地震モーメント ② 1.3 3.5 6 3.0 T :継続時間 ③ 3.0 8.0 16 0.6 h :深さ ∑ 13.2 3。千葉東方沖群発地震 2月8日未明から10日未明にかけて千葉東方沖で群発地震がありました。 防災科技研の情報によると震源は 震央:(35.35~35.38N, 140.57~140.60E) 深さ:27~28km のごく狭い範囲でした。これまでの経験からすると,このような狭い範囲の群 発地震では,波形は互いに良く似ていて,記録を並べるだけでも,ある程度, 震源の時間変化を窺い知ることができると期待されました。 しかし実際に観測された記録はその期待とはほど遠いものでした。波形は地 震ごとにかなり異なり,しかもP波初動部もいろいろです。そのような訳で, この群発地震の解析は今のところ完全にお手上げです。図3に,CHU(千葉 大学)で観測されたP波初動部の変位波形を示すに留めます。 この地震は,通常の群発地震とは少し発生パターンが異なっているのではな いかと思われる節があります。というのは,2月10日0時52分に最大の地 震が起こり,これを最後に活動が終息してしまったことです(微小な地震まで 含めればそうではないかもしれませんが)。 なお時を同じくして,神津島でも群発地震が起こりました。これが千葉東方 沖地震とどのような関係(無関係も含めて)にあるのか,全くわかりません。 4。スマトラ島地震 新聞によると,地震による死者は100名以上,けが人は1000名に上る とのことです。YCUのモニター記録を見る限りはさほど大きいようには見え ません(かなりノイズに埋もれています)が,QEDの震源情報は次の通りで す。 震央:5.4S 104.8E 深さ:normal(浅い) Ms:7.2 ここではIRISの遠地実体波(P&SH)を用いてインバージョンを行な いました。ほとんどの観測点で,SH波の振幅がP波より10倍以上も大きい ことから,この地震は横ずれ型のメカニズムであると予想されます。 解析結果を図4に示します。ほぼ似たようなメカニズムを持った3つのサブ イベントが得られました。3つ目は,大きさは小さいのですが,MAJO(松 代)のP波記録に大きく寄与します。サブイベントの空間分布はかなり確かで す。破壊は南東方向の走向に沿って進んだと思われます。 震源パラメターの詳細は以下の通りです。 # φ δ λ Mo T h Mo/T**3 x10**25 cgs sec km x10**23 cgs ① 124 86 -176 8.6 5.0 5 6.9 ② 304 88 187 12.8 6.0 5 5.9 ③ 311 65 152 1.9 4.0 5 3.0 ∑ 305 88 175 22.9 前のノースリッジの地震に比べると,Mo/T**3 の値がかなり大きいこと,し たがって,応力降下が大きいことがわかります。 ●うるう秒の補正作業について 昨年(93年)7月1日にうるう秒が挿入されました。これ以降,時刻補正 が行なわれるまでの間,1秒だけ時間が進んでいることになります。以下に作 業日を報告するとともに,皆様に連絡が遅れましたことをお詫び申し上げます (MK&YI) 作業日とおよその時刻 YCU 93年 7月 3日15:00 HKY 93年 7月17日14:00 SMZ 93年12月15日14:44 TKO 93年12月16日14:54 CHU 94年 1月11日16:00 (追記)新年早々,2週間ほどニュージーランドに出張してきました。IAS PEI(地震学及び地球内部物理学国際連合)の定例会に出席するためです。 この間にノースリッジ地震が起こりました。当日,IASPEI会場ではさっ そく特別セッションが催され(!),また,e-mailで送られてきたCMT解や 地震記録,新聞記事などが壁に貼られました。まさに”リアルタイム地震学” の波が確実に進行しているのを感じました。(MK)