ＹＣＵ地震学レポート　No.6

ＹＣＵ地震学レポートNo.６                                  Mar.13,92

              ３月１０日  神津島近海の地震  解析速報


  さる３月１０日未明，関東南部で小さい地震がありました。横浜ほかで震度
Ⅰを記録した程度で，ほとんどの人は気が付かなかったことと思います。気象
庁発表によると，震源地は伊豆半島南方で，深さ40km，マグニチュードは 5.5
でした。
  昨年９月３日の地震（ＹＣＵノート＃２参照）との関連で，多少気になるこ
とがあり，記録を解析してみることにしました。Ｍ 5.5ということで，ＱＥＤ
の速報があるものと待っていたのですがありませんでした。そこで，震央やマ
グニチュードの情報を東大地震研や防災科研からもらい，それを基に記録の解
析を行うことにしました。両研究所の情報はほぼ同じで，マグニチュードは気
象庁発表より大分小さ目でした（5未満）。

  図１に，波形のインバージョンの結果（暫定版）を示します。ほぼ東西方向
に引っ張り軸をもつ２つのサブイベントが得られました。地震モーメントの総
和は 3.1×10**23dyn.cm （Mw=4.9），震源時間関数のパルス幅はそれぞれ
2.0secでした。結果の詳細と，解析に用いた構造を表１に示します。
  図２に，合成記録と観測記録の比較を示します。これみると分りますが，解
析はとても満足のいくものではありません。地下構造の効果をいろいろ検討す
る必要があります。
  図１の下方に，防災科研の微小地震ネットによる自動決定メカニズムが示さ
れています。このメカニズムは，立上りの読取値を含め，もう一度検討し直す
必要があるかも知れない（石田さん，私信）とのことでしたが，ここにプロッ
トされた初動の押し引きは，最初のサブイベントのメカニズムと結構調和的で
あるように思われます。

  １昨年及び昨年９月の地震と今回の地震を並べてみると，図３のようになり
ます。いずれも引っ張り軸は駿河トラフに直角な方向を向いています。このこ
とは，これらの地震がフィリピン海プレートの沈み込みをプッシュする方向に
起こっていることを示します。もっともこれら３つの地震を並べること自体，
かなり意図的なことではあるのですが，いずれにせよ，この辺の地震をリアル
タイムで注意深く見ていく必要があるのではないでしょうか。