EIC地震学ノート No.27                Oct. 16, '97

東大震研情報センター

◆広帯域地震記録解析◆ ----------------------------------------------------

10月11日御前崎沖の地震(Mj 4.9)

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● 概略・特徴: 10月11日14時44分、御前崎沖を震源とするMj4.9の地震が
ありました。震源の位置は9月26日23時12分Mj4.0と同じです。気象庁発表の
速報震源諸元は次のとおりです。

 発生時刻          震央        深さ   マグニチュード
 14:44 JST      34.42°N  138.23°E    36 km     4.9  (Mj)

● データ処理: FREESIA(防災科学技術研究所)の6観測点:FUJ, JIZ, KFU, SGN,
SMZ, NAAの記録を使いました。震央距離が70-150km、方位は-40<φ<50と狭い範囲し
かありませんが、沿岸で起こる地震では、海底地震計の波形データが使えないかぎり、
やむを得ない条件です。ただし今回は、9月26日の地震より規模が大きく(振幅が
約10倍)、データの質は良好です。

●結果: 解析結果を図1に示します。メカニズムは、ほぼ鉛直と水平のP波節面を
もちます。東西走向の鉛直面が断層面だとすると、北落ちです。深さの最適解は25km
です。したがってフィリピン海プレートの内部の地震で、Downdip-extension になり
ます。規模の割に、破壊継続時間が長く、低応力降下です。主な震源パラメタは次の
通りです。

 発生時刻        14:44:35
 走向、傾斜、すべり角    =  (260, 89, -74) 
                (高角/低角縦ずれ)
  地震モーメント       Mo=  2.1 x10^16 Nm  (Mw = 4.8)
 深さ             H = 25km
 破壊継続時間        T = 2.0 s
 断層長さ(Bilateral, v=2.5km/s) L = 5km
 断層面積 (W=0.5L)    S = 1.2 x10^7 m^2
 応力降下        Δσ = 2.5 Mo /S^1.5 = 1.3 MPa

●解釈その他: 上のメカニズム解は、気象庁から発表されたP波初動解(正断層
型)と必ずしも一致しません。しかし押し引き分布そのものは、本メカニズムでもほ
ぼ説明できるように見えます。また、防災科学技術研究所などの長周期波形解析とも
一致しませんが、これは用いている周期帯域の違いによると思われます。
                            (文責:菊地・山中)