EIC地震学ノート No.13                Jan. 16, 97

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析◆ --------------------------------------

1月11日 メキシコの地震 ( Ms 6.1 )

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● 概略・特徴: メキシコのミチョアカン州で、現地時間1月11日14時28分、
Ms 6.8の地震がありました。被害の有無はわかりません。震源地は85年9月19日
のメキシコ大地震(Ms8.1)の震源域の北西端に位置します。そこで、まずもって、
同じメカニズムなのか、あるいはプレート内部の地震なのか、関心のあるところです。
USGSの速報震源は以下の通りです。

     発生時刻          震央         深さ   マグニチュード
USGS  20:28:25.7 GT    18.25°N  102.81°W    13 km     6.8  (Ms)

● データ処理: IRIS-DMCの準リアルタイムサービスにより広帯域地震計記録を集め
ました。 観測点の方位分布は良好です。解析には14地点のP波上下動を用いました。
震源近傍の構造として、水3kmの海水層と厚さが20 kmの地殻、その下に半無限のマン
トルを置きました。まず1個の震源を仮定して最適のメカニズムを決め、次に断層面
を固定して破壊の時空分布を求めました。

●結果: 解析結果を図1に示します。メカニズムは、ほぼ鉛直面と水平面をP波節面
とし、断層面の取り方に2通りの可能性があります。そこで鉛直断層面と水平断層面
のそれぞれについて波形のインバージョンをしてみたところ、鉛直断層面の方がわず
かながら良い波形の一致が得られますので、暫定解としてこれを採用しました。震源
の深さについて、USGS解 (13km) とHarvard-CMT解 (46km) の間に大きな違いがありま
す。我々の解では、初期破壊点の深さが40kmで、そこから深い方に向かって10km余り、
南東方向に向かって30kmほど破壊が進みました。主な震源パラメタは次の通りです。

(version 970119)
   走向、傾斜、すべり角           =  (118, 90, 90)/(194, 1, -14)
      地震モーメント               Mo = 5.4 x10**19 Nm    Mw = 7.1
      破壊継続時間                 T  =  17 s 
   断層面積                     S  =  30 x 15 km**2
   深さ                 h  =  40-50  km
   食い違い                  D  =  Mo/μS = 1.9 m  (μ= 64 GPa)
   応力降下          Δσ =  2.5 Mo/S**1.5 = 14 MPa

● 解釈: ここでは鉛直断層面を採用しましたが、水平断層面の可能性も捨て切れ
ません。いずれにせよ、メカニズム、応力降下、震源の位置から判断して、プレー
ト内地震(Down-dip Extension)と考えられます。    
                                                       (文責:菊地正幸)
                                         e-mail: kikuchi@eri.u-tokyo.ac.jp