EIC地震学ノート No.11                Dec. 26, '96

東大震研情報センター

◆簡易実体波解析◆ ------------------------------

12月10日 九州北部の地震 (Mj 3.6)

12月16日 周防灘の地震 (Mj 4.1) ------------------------------------------------

● 概略・特徴:どちらの地震も普段は注目されることのない程度の微小地震です(10
日の地震では福岡県飯塚市で震度2を観測)。ただ、活動の低いところで起こったこ
とと、活断層(福智山断層)の極近傍で起こったことなど、いくつか注目すべき点が
あり、地震波記録をあたってみました。気象庁の速報震源は以下の通りです。福岡管
区気象台による震央分布を図1に示します。

     発生時刻         震央         深さ    マグニチュード
12月10日 16:02   33.7°N  130.8 °E   10 km      3.6 (Mj)
12月16日  01:28   33.8°N  131.2 °E   10 km      4.1 (Mj)

● データ解析: 九州大学島原地震火山観測所(観測点KTK)の短周期地震計及び広
帯域地震計の記録を変位波形に直したものを用いました(図2、図3)。上下動のP
波初動付近のパルスを直達P波とみなし、放射パターンを無視して、パルスの幅と面
積から、震源パラメタを推定しました。

●結果:得られた震源パラメタは以下の通りです。

イベント   Mo     Mw   T     L   S       D     Δσ 
         e14 Nm            s   km  km**2      m     MPa
12/10      7     3.8  0.15   0.5    0.13    0.2     37
12/16     21     4.1  0.5    1.5    1.1     0.1      5
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 Mo: 地震モーメント   T: 破壊継続時間   L: 断層長 S: 断層面積
 D: 食い違い (= Mo/μS,  μ = 25GPa)   Δσ: 応力降下(=  2.5 Mo/S**1.5)

● 解釈・注目点:九州大学島原地震火山観測所によると、上述の12月10日の地
震の3時間半後に起こった地震のP波初動解は、東西圧縮の横ずれ型断層を示してい
ます(図4)。近くの福智山断層の走向を考慮すると、震源断層は“北西-南東の走
向をもつ左横ずれ断層”と考えられます。精度は悪いのですが、かなり高い応力降下
を持っていることや、小さいなりに初期破壊の相をもっていること、余震を伴ってい
ることなどが注目されます。また、16日の地震は図3からわかるように、2連発地
震です。

●謝辞: 九州大学理学部、島原地震火山観測所、及び、福岡管区気象台からは貴重
な地震データを頂きました。ここに感謝いたします。
                                             (文責:菊地正幸・山中佳子)