EIC地震学ノート No.5                     Oct. 21, '96

                             東大震研情報センター

◆遠地実体波解析◆ -------------------------------------------

10月19日 日向灘の地震 (Ms 6.7)

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●概略・特徴: 10月19日23時44分、日向灘を震源とするやや大きい地震が
あり、鹿児島県と宮崎県で計測震度5弱を記録しました。気象庁は九州の東海岸、瀬
戸内海沿岸、薩南諸島に津波警報を発令しました。その後、種子島で14cm、室戸で13
cm、日南で12cm、土佐清水で10cmの津波第1波が観測されました(TVニュース速報に
よる)。気象庁とUSGSの震源諸元は以下の通りです。
            震央            深さ     マグニチュード
気象庁 31.8°N     131.9°E      40 km    7.0 (Mj)
USGS   31.92°N    131.42°E     10 km     6.7 (Ms)
前日の種子島近海の地震の場合とは逆に、MjがMsより大きく出ています。

●データ処理: IRIS-DMCの準リアルタイムサービスにより広帯域地震計記録を集め
ました。 観測点の方位分布は良好です。20地点のP波上下動と2地点のSH波を用いま
した。震源近傍の構造として、水深3kmの海水層と厚さ10kmの地殻、その下に半
無限のマントルを置きました。波形インバージョンでは、まず断層メカニズムを決め、
次に断層面を固定して、サブイベントの時空分布を求めました。

●結果: 解析結果を図1に示します。メカニズムは典型的な低角逆断層です。深さ
の範囲は30-35kmです。Mwは6.8で、種子島近海の地震よりわずかに大きい程度です。
破壊は北東方向に進みました。主な震源パラメタを下に示します。

    走向、傾斜、すべり角 =      (230, 20, 106)
    地震モーメント         Mo = 1.8 x 10 **19 Nm  (Mw = 6.8)
    破壊継続時間          T = 20 s    
    断層面積(サブイベントの範囲)  S =  30 x 15 km**2
    深さ               h  = 33 km
    食い違いの大きさ            D  =  Mo/μS = 0.63m  (μ= 64 GPa)
    応力降下               Δσ =  2.5 Mo/S**1.5 = 4.7MPa

●解釈: 震源の位置を確かめていませんが、フィリピン海プレートの潜り込みに伴
うプレート間の低角逆断層と考えられます。ただし応力降下がやや高めです。また、
前日の種子島近海の地震と同じように、破壊が北東方向に向かって伝播(ユニラテラ
ル)しているのが特徴的です。震源の深さは機関によってかなり違っています。これ
は津波の大きさを評価する際には重要と思われます。

◆追記(Oct.23):阿部によるとMt = 7.0 でした。
                                      (文責:菊地正幸)