YCU地震学レポートNo.25 Aug.12,93

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8月7,8日の静岡県の地震と8月8日マリアナ地震の解析(暫定版)

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  そろそろお盆休みをと思っている矢先,次々と気になる地震が起こっています。
7月22,23日の千葉県下の地震,26日から29日にかけての伊東の群発(?)
地震,31日の房総先端の深さ100km以深の地震,8月7,8日の静岡県の地
震,さらに8日のグアム(マリアナ)の地震,・・といった具合です。何とか合間
を縫って解析を続けていますが,この辺で一休みしたいというのが本音です。とり
あえず,静岡県の地震とマリアナ地震の結果を報告しておきます。

<マリアナ地震編>
 
 ☆☆省略☆☆

<静岡県の地震編> 図1
  8月7日夕方から8日未明にかけて,静岡で有感地震が相次ぎました。そのうち,
7日15:01と8日00:18には震度4を記録しました。これら2つの地震に対
する防災科技研の震源情報は次の通りです。

    地震    日  時                 位  置        深さ      M
      1    8/7 15:01:19.45   35.002N 138.445E   8.2km     3.7
      2    8/8 00:18:39.40   35.008N 138.435E   7.6       4.1

  SMZ(清水)観測点の震央距離は7kmです。これとJIZ(中伊豆)の記録を
図2に示します。上下,南北の各成分ごとに,2つの地震の記録を並べてあります。
2つの地震の記録がよく似ていることがわかります。
  インバージョンの結果を図3図4に示します。2点だけの記録のため,解に不確
定さはありますが,SMZ観測点の存在価値はかなりのものです。主な震源パラメタ
ーは次の通りです。

  No    メカニズム解  モーメント     Mw  継続時間
           φ,δ,λ       dyn.cm               sec
  1       156,31, 5      0.93x10**22   3.9    0.70
  2       163,32,28      3.54          4.3   >0.80

緩傾斜の面を断層面とすると,下盤側のスリップの方向は北西向きとなり,フィリピ
ン海プレートの潜り込みをうかがわせます。震源の深さが多少(数km)浅過ぎるので
すが,一応,「プレート間」地震の可能性を疑ってみる必要がありそうです。
  一方,防災科技研のネットワークによるP波初動解は,図3,4に示す通り逆断層
成分を少し伴った東西圧縮の横ずれ型で,上の解とは一致しません。この不一致の1
つの鍵は,実は,SMZの記録が握っている様です。というのはP波初動解ではSMZ
がちょうど節面にあたります。しかるに図2の記録を見ると,とてもSMZが節面上
にあるとは考えられません。したがって横ずれ型というのはあり得ないのではないか,
というのが当初の筆者の考えでした。
  しかし,その後,防災科技研の堀さんに指摘されたことですが,SMZの記録を拡
大してみますと,小さいがはっきりとした”引き”の相がみえます。したがって,少
なくとも高感度の地震記録でみた初期破壊のメカニズムは,ほぼ横ずれ型でよさそう
です。
  今回のようなP波初動解と波形インバージョンの解の不一致は,これまでにもたび
たびありました。原因は大きく分けて2つあります。1つは,どちらか一方あるいは
双方の解の不確定さ,もう1つは,初期破壊から主破壊に移行する段階でのメカニズ
ム変化です。今回の場合,後者の可能性が強いと思われますが,震源の場所が場所だ
けに,さらに注意深く検討してみる必要がありそうです。(MK)