EIC地震学ノート No.91 Aug. 18, 00 (rv. Aug.19)
東大震研情報センター
◆地震波解析(遠地実体波による改訂版)◆ ----------------------
8月18日神津島近海の地震(M6.0)・式根島近海の地震(M4.9)
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● 概略・特徴: 地震活動の続いている神津島近海で、8月18日朝10時52 分にM6.0の地震が発生し、式根島で震度6弱、神津島で震度5強を記録しました。 また、12時49分に式根島近海でM4.9の地震があり、式根島で震度6弱、新島で 震度4を記録しました(図)。気象庁の速報震源は以下の通りです。 発生時刻 震央 深さ M 08/18 10:52(JT) 34.2°N 139.3°E 10 km 6.0 08/18 12:49(JT) 34.3°N 139.2°E 10 km 4.9 ●データ処理: 最初の地震についてはIRIS-DMCから4点の遠地P波上下動記録を 収集しました。後の地震については、防災科学技術研究所のFREESIA観測点から、 館山(TYM)、中伊豆 (JIZ)、都留(SGN)の広帯域地震計記録を集め、0.01-1Hzのバン ドパスフィルターをかけ、変位記録に変換しました。 ●結果: 図1、図2に結果を示します。神津島近海の地震はやや横ずれ成分を含む 正断層型(北東-南西張力)、式根島近海の地震はやや正断層成分を含む横ずれ型 (東西張力)です。主な震源パラメータは次のとおりです。 神津島近海 式根島近海 震源時 10:52:22 12:49:14 (走向、傾斜、すべり角) (150, 59, -48)/ (325, 68, -164)/ (270, 51, -138) (229, 76, -22) 地震モーメントMo 5.8 x10**17 Nm 2.0 x10**16 Nm (Mw = 5.8) (Mw = 4.8) 破壊継続時間 T 約 4 s 5 s 主要破壊の深さH 5 km 6 km 断層面積S 10x5 km**2 4x2 km**2 食い違いD = Mo /μS 0.39 m (μ=30GPa) 0.08 m 応力降下Δσ 4.1 MPa 2.2 MPa ●解釈その他: 最初の地震の震央は神津島東方で、7月に起こった一連のM6クラ スの地震と近いところにあります。これまでのM6クラスの地震より浅めです。メカ ニズムはやや横ずれ成分を持った正断層型で、7月24日のMw5.6の地震と類似して います。今回の震源域近傍では8月16日から活動の低下が認められました。断層面 上の突起などで一時的にすべりがロックされたのではないかと考えられます。いずれ にせよ、マグマによる下からの突き上げは継続しており、今後ともGPSデータや地 震データ等による地殻活動の厳重な監視が必要と考えられます。 なお、遠地実体波解析では、pP,sPなどの反射相を用いているため、深さの精度は 良好です。また、全体の震源時間についても、近地項や地下構造の影響を受けにくい 分、安定した推定値が得られます。分解能は概ねt*=1sです。(近地地震波による暫 定解を図3に残しておきます。) 式根島近海で起こった地震は規模は小さかったのですが、震源が極く近かったため 式根島で大きな揺れになりました。この地震のメカニズムは一連の地震と張力軸を異 にします。マグマ貫入等で広域応力場が局所的に乱されているのかも知れません。 (文責:菊地・山中)