EIC地震学ノート No.89 Aug. 07, '00

東大震研情報センター

◆遠地波形解析(暫定解) ◆ ---------------------------

  8月4日サハリンの地震(Ms 7.0)

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● 概略・特徴: 8月5日午前8時13分(現地時間)ごろ、サハリン島中部
クラスノポーリエ付近で Ms7.0の地震がありました。報道によると、家屋千棟
余りに被害があったが、犠牲者はでていないとのことです。この震源地は95年
5月28日に死者2千人余を出したネフチェゴルスクから南へ約400kmの地点
です。USGSの速報震源は次の通りです。

  発生時刻      震央           深さ     Ms
 08/04 21:13:03 (UT)  48.9°N  142.2°E   shallow 7.0

●データ処理:IRIS-DMCの24点の遠地P波広帯域地震計記録を用いました。方位
分布は良好です。はじめに点震源を仮定してメカニズム解を、次いで、断層面を
固定して断層すべりの空間分布を求めました。

●結果:結果を図1に示します。左下はすべり分布を表します。右が北、左が
南です。主な震源パラメーターは次のとおりです。

 走向、傾斜、すべり角 =  (356, 29, 92)
 地震モーメント   Mo = 1.7x10**19 Nm  (Mw = 6.8)
  破壊継続時間    T = 12 s
 主要破壊の深さ   H = 6 km
 断層面積          S = 25x10 km**2
 食い違い      D = Mo /μS = 2.3 m (μ=30GPa)
 応力降下    Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 11 MPa

●解釈その他:ほぼ南北に走向を持つ低角(東傾斜)逆断層です。ユーラシアプ
レート(西側)とオホーツクプレート(東側)の境界におけるプレート間地震と
思われます。95年の地震は横ずれ型でした。これら2つの地震は、オホーツクに
対するユーラシアの回転極が95年の震源の真西にある(Seno et al., 1996)と
すれば矛盾なく説明されます(図2)。また、今回の震源地付近でのプレート相対
速度は 4mm/yr、食い違いの大きさは約 2m ですので、再来間隔は500年ぐらいと
推定されます。                                 (文責:菊地・山中)