EIC地震学ノート No.88 Jul.31(rev. Aug.1), '00
東大震研情報センター
◆遠地地震波解析(改訂版)◆ ---------------------------
7月30日三宅島近海の地震(M6.4)
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● 概略・特徴: 7月30日夜三宅島南西沖でM6.2の地震が発生し、三宅島で震 度6弱、神津島で震度5弱を記録しました。気象庁の速報震源は以下の通りです。 発生時刻 震央 深さ M 07/30 21:25(JT) 34.0°N 139.4°E 10 km 6.2=>6.4 ●データ処理: IRIS-DMC8点の広帯域実体波(P波上下動)記録を用いました。 方位分布は概ね良好です。波形は多重震源(2連発)の様相を呈しています。 改訂版では2個のサブイベントを求めました。 ●結果:図1に結果を示します。メカニズム解はほぼ純粋な横ずれ型です。 左下の図は南北方向の断層面をとった場合のサブイベントの分布を示します。横軸 (strike)の右が南、左が北です。破壊は南から北に向かったことが示唆されます。 主な震源パラメータは次のとおりです。 (走向、傾斜、すべり角)=(198, 83, 0) / (288, 90, -173) 地震モーメント Mo = 6.3 x10**18 Nm (Mw = 6.5) 破壊継続時間 T = 6 s x2 主要破壊の深さ H = 10-15 km 断層面積(片方向伝播,W=L/2を仮定)S = 15x7.5 km**2 食い違い D = Mo /μS = 1.7 m (μ=33 GPa) 応力降下 Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 13 MPa ●解釈その他:7月1日以降の一連のM6クラス地震とはあきらかに震源位置が異 なります。1983年の三宅島噴火の際に起こったM6の地震と似た位置にあります。 メカニズムは東北東-西南西引っ張りの横ずれ型です。波形の一致は南北走向の方 が東西走向より若干良好ですが、有意な差ではありません。南北走向では左横ずれ となります。今回の地震規模(Mw)は一連の地震の中で最大です。応力降下も大きめ で、かつ、多重震源の様相を呈しています。神津島近海のマグマへの影響に十分注 意が必要と考えられます。 (文責:菊地・山中)