EIC地震学ノート No.83 Jul.15, '00
東大震研情報センター
◆地震波解析(暫定解)◆ ---------------------------
7月15日新島近海の地震(M6.2)
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● 概略・特徴: 地震活動が活発化している神津島・新島近海で、7月15日 10時半に今月3度目となるM6の地震が発生しました。新島で震度6弱、伊 豆大島で震度5弱を記録しました。報道によると、新島で7人が負傷、2棟が 半壊のほか数カ所で土砂崩れや道路に亀裂の被害がでました。気象庁の速報震 源は以下の通りです。 発生時刻 震央 深さ M 07/15 10:30(JT) 34.4°N 139.3°E 10 km 6.2 ●データ処理: 防災科学技術研究所のFREESIA観測点から、館山(TYM)、中伊 豆 (JIZ)、都留(SGN)の広帯域地震計記録を集めました。これに帯域0.01-1Hzの バンドパスフィルターをかけ、変位記録に変換しました。 ●結果:図1に結果を示します。メカニズム解はほぼ純粋な横ずれ型断層(東西 走向の右横ずれまたは南北走向の左横ずれ)です。主な震源パラメータは次のと おりです。 (走向、傾斜、すべり角)= (277, 86, 163)/(8, 73, 4) 地震モーメント Mo = 1.3 x10**18 Nm (Mw = 6.0) 破壊継続時間 T = 約7 s 主要破壊の深さ H = 6 km 断層面積(余震分布)S = 10x5 km**2 食い違い D = Mo /μS = 0.87m (μ=30GPa) 応力降下 Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 9.2 MPa ●解釈その他: 概ねこの周辺の広域応力場を反映したメカニズムですが、M6 クラスの地震が断層長程度の至近距離で、わずか1週間程度の間隔をおいて起こ っていることから、なにがしかの歪みエネルギーの発生源が地下で活動している (たとえばマグマが移動)のではないかと想像されます。また、断層モデルでは うまく説明できない地震波も観測されています。今後、GPSデータや地震デー タ等による地殻活動の厳重な監視が必要と考えられます。 (文責:菊地・山中)