EIC地震学ノート No.158+              Dec 06, 04 
                             東京大学地震研究所


◆近地強震計データ解析(暫定解)◆ -------------------------------------- 

2004年11月29日釧路沖地震(Mj7.1)と1961年08月12日釧路沖地震(Mj7.2)の震源過程 

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●EIC地震学No.158では遠地実体波を用いて11月29日に発生した釧路沖地震の 震源過程解析を行った.その結果今回の地震は1961年の地震の再来である可能性が でてきた.
ここではK-net, KiK-netのデータを用いて11月29日の地震のより詳細な震源過程を 調べた.また1961年の地震についても気象庁強震計の記録(煤書き)を用いて 解析した.

●方法:
《2004年11月29日》震源の位置は気象庁によって求められたものを用い, 遠地実体波解析で求められたメカニズム解析結果を参考に断層面は固定して 断層面上のすべり分布を求めた.K-net, KiK-netのデータを速度波形に直し0.02-1Hz のバンドパスフィルターをかけた.解析には震源距離が50km程度の観測点のP波 到達から30秒を用いた.
《1961年08月12日》震源位置は気象庁によって求められたものを用い,2004年の メカニズム解を参考に断層面を固定して断層面上のすべり分布を求めた.煤書きの 記録をデジタイズして解析した.記録は変位波形である.用いた観測点は釧路, 網走,帯広,広尾の4点である.
手法はKikuchi et al.(2003)でグリッドサイズは4kmである.Nakanishi et al.(2004) の構造探査の結果を参考に1次元水平多層構造でグリーン関数を計算した.

●結果:求められたすべり分布,波形の比較を図1図2に示す.

 2004/11/291961/08/12
メカニズム(238, 26,111)(238, 26,108)
破壊開始点の深さ48 km49 km
Mo (Nm)2.7x10**19 Nm (Mw6.9)4.2x10**19Nm (Mw7.0)
断層面積20 x 16 km16 x 16 km
最大すべり量(m)1.5 m2.5 m

●結果・考察
2004/11/29:
遠地実体波解析の結果とほぼ同様のすべり分布となった. 構造の影響か上下動のあいは水平に比べてよくなく, 最大すべり量は1.5mと遠地実体波解析より小さめになった. 下図の赤いコンターがこの地震のすべり分布,赤い●は 本震後2日間の余震分布である.これらを比較すると余震の空白域に アスペリティが存在する.
1961/08/12:
観測点が震源から遠く,かつ西に偏っているので2004年の地震 ほど精度よくは求めることができない.が,アスペリティの 位置はそれほど動かないと思われる.下図の黒いコンターがこの地震 のすべり分布である.大きくすべった領域はほぼ2004年の地震の アスペリティと重なる.このことから2004年の地震は1961年の 地震の再来地震と考えられる.なおすべり量は1961年の方がかなり 大きく求まったが,今後これらと同じ観測点を使って2004年についても 解析してみることにより直接の比較をしてみる必要があるかもしれない.

すべり量分布と2004年余震分布.コンターは赤が2004年,黒が1961年のもので 0.3m間隔で本震は0.6m以上すべったところ をプロットした.余震分布は気象庁による2004/11/29-30までに起きたものを プロットした.

(文責:山中)