EIC地震学ノート No.153      Oct 22, 04  

◆遠地実体波解析◆ --------------------------------------------- 

9月5日の紀伊半島南東沖地震(本震:Mj7.4)の再解析

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●この地震から1ヶ月以上が経ちました.その後,海底地震計がこの海域に
投入され,その後の余震分布が詳細に求まりつつあります.またGPSによる
観測からcoseismicな変動の様子(国土地理院)もわかってきました.
EIC地震学ノートNo.152でも触れたように遠地地震波形だけではこのような
逆断層タイプの地震の場合断層面を決定することができません.(どちらの面を
断層面としても大きな違いはでません)が,EIC地震学ノートNo.152で示した
断層ではGPSによる変動は説明できないことがわかりました.
国土地理院の観測によると紀伊半島先端付近では西向きの動きが見られるのに対し,
我々の結果ではどうしても東向きの動きになってしまいます.
そこで断層面を南西傾斜の面にして解析をしてみました.

●結果: 結果をに示します。
主な震源パラメータは次のとおりです.

EVENT地震B
走向、傾斜、すべり角(135, 40, 123)
地震モーメントMo1.7x10**20Nm
Mw 7.4
破壊継続時間(主破壊)30s
破壊開始点の深さ10 km
食い違い Dmax6.5 m

●解釈その他:波形のあい具合はこれまでとそれほど変わりません.南西方向に傾斜 した面を断層面とすると傾斜が40度と緩くなります.またこれによってメカニズム解 もその他の機関が発表しているCMT解と似た感じになりました.
破壊が北西方向に進んだことはこれまで通りです.また横ずれ成分がかなり含まれた 逆断層型の地震です.特に浅いところは横ずれ成分が大きいことがわかります.ハーバード 大学のCMT解を見てもかなりnon-double couple成分が大きくなっていますが,これは メカニズムの変化があることを示しているものと思われます.気象庁による余震の メカニズム解をみると,この北西に延びた余震群のメカニズムは横ずれが多く起こって います.このこととこの解析結果とは調和的です.
得られた前震と本震の断層を使って変位を計算するとのようになります.紀伊半島 先端部での西向きの動きも説明できることがわかりました.このことから本震の断層面 は南西傾斜であった可能性が高いです.

3つの地震のすべり分布.地震A,Bについては1.5m以上すべった領域を0.5m間隔で, 地震Cについては0.6m以上すべった領域を0.3m間隔コンターをひいた.★はそれぞれ の破壊開始点である.小さな赤丸は気象庁一元化震源による余震分布(6日まで)

                            (文責:山中) 謝辞:変位の計算には気象研究所が開発したMICAP-Gを使わせて頂きました.