EICニュースレターNo.3


本号の目次
行政監察結果報告書を読んで(阿部勝征)
地震研anonymousftpで公開されているデータ紹介〜震源情報(日本編)(山中佳子)
地震学ノートより抜粋(菊地正幸)
RAの部屋〜UNIXについて(地震火山災害部門【纐纈研:D1】(関根秀太郎)
使って便利なソフトウェア(3)〜LAPACK(桧山澄子)
センター計算機システムの更新について.


行政監察結果報告書を読んで

阿部勝征
阪神大震災を踏まえて、政府は地震防災対策特別措置法を制定し、また、災害対策基本法を大幅に改正した。これを背景に総務庁行政監察局は,各省庁や地方自治体などの震災対策に縦割り的な弊害やことなかれ主義がないかどうかを点検し、1月16日に「震災対策に関する行政監察結果報告書」
(http://www.somucho.go.jp/kansatu/index.htm)を公表した。内容のごく一部を紹介してみたい。

全体は123ページに及び、大半は防災対策に関連する。なかには分かりやすい指摘もある。たとえば、東急の三軒茶屋駅は昭和女子大を避難場所として指定しているが、大学とは口頭による了解も取り付けていないなど、調査した私鉄8駅のうち3駅は学校と調整をはかっていなかった。

地震調査研究推進体制も監察の対象となった。長さは20ページにわたる。毎日新聞(近畿版)は1面トップで「推進本部役割果たさず。省庁間の利害調整不十分。連携強化勧告へ」と報じた。

まず、政策委員会関係への勧告は、各省庁の予算要求を形式的に取りまとめるだけで実効的な調整を行っていないこと、基盤的調査観測計画のなかに地殻変動や地磁気などの観測項目が含まれず国としての総合的な方針が示されていないことなどにふれている。地震調査委員会関係については、地震後の臨時会が迅速に開催されるよう勧告が出された。

勧告には至らないが行監は次の認識を提示した。地震予知連絡会は推本の設置により地震予知の総合的判断という業務を終了しているが、業務内容の整理を行っていない。測審の建議による地震予知計画は推本の責任で実施されるべきであり、従来の役割を終えたことから見直しが必要である。推進本部においては、地震法のもとで自らが総合的かつ基本的な地震調査観測計画を「早急に」策定するよう強く求められている。今後の動きに深い関心を払っていきたい。


地震研anonymousftpで公開されているデータ紹介〜震源情報(日本編)〜

地震研anonymous ftpサイトでは、いろいろな地震関係のデータが整備され、ユーザーに提供されています。地震研のサイトのアドレスはftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/
です。これらのデータの再配布は禁止されていますのでご注意下さい。

anonymous ftpでの利用の場合、パスワードには必ず自分のE-mailドレスを入れてください。今回は日本付近で起こった地震の震源カタログを紹介します。

気象庁月報

ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/data/jma/geppo/
気象庁から出されている月報です。震源と読みとり情報が入っています。現在、1963年から1994年までのものがあります。なお、このデータをftpで入手するには、userIDにguest、パスワードは自分のE-mailアドレスではいる必要があります。従ってnetscapeなどのブラウザではダウンロードできません。ご注意ください。

気象庁震源

ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/data/jma/hypo/
気象庁の震源情報のみのカタログです。月報がまだでていないものについては速報値のカタログをご覧下さい。現在1926年から1994年までのデータがあります。このデータも気象庁月報と同様、guestで入る必要があります。

気象庁震源(速報)
ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/data/jma/sokuho/
気象庁の震源速報情報のカタログです。現在、1995年1月から1997年8月までのデータがあります。このデータも気象庁月報と同様、guestで入る必要があります。

JUNEC
ftp://ftp.erj.u-tokyo.ac.jp/data/junec/hypo/
国立大学観測網により決定された震源カタログ。現在、1985年から1992年までのデータがあります。

理科年表のカタログ
ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/data/rika/
理科年表に載っている「日本付近のおもな被害地震年代表」。(吉井敏尅先生作成)

松浦・唐鎌カタログ
ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/data/matkar/
松浦・唐鎌による関東地域の地震カタログ。

松浦・唐鎌カタログから【震源決定誤差(≦10km)の地震を選択してプロットしてあります】

EIC地震学ノートより抜粋
先月起こった地震の中から興味ある地震を1つとりあげます。

No.40Jan.13,98
1月4日Loyalty諸島の稍深発地震(Ms7.0)

USGS速報による震源諸元
発生時刻 震央 深さ Ms
06:11:51  UT22.17S170.5E 100q  7.0

データ処理:IRIS-DMCのデータを地震研究所の準リアルタイムサービス(gopher)により収集しました。解析には11地点の広帯域地震計記録(P波上下動)を用いました。明瞭な3連発地震です。

結果:メカニズムを少し異にする3個のサブイベントから成ります。1個目のメカニズムはあまりよく決まりませんので、2個目と同じにしてあります。概ね北北東ー南南西圧縮の逆断層です。主な震源パラメタは次の通りです。
(図はホームページhttp://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/EIC/EIC_News/をご覧下さい)

まず、全体について
走向、傾斜、すべり角=(337,43,133)/(105,60,57)
地震モーメントMo=1.5x10**20Nm(Mw7.4)
破壊継続時間丁=38s
深さH=98km

以下、最大サブイベントについて
断層面積   S=30x15km**2
くいちがい   D=Mo/μS=4.Om
応力降下 △σ=2.5Mo/S**1.5=39MPa

解釈その他:3つのサブイベントからなります。このうち最初のサブイベントが比較的ゆっくりした立ち上がりを示します。これと対照的に3発目は高応力降下を示します。(文責:菊地・山中)

<追記>一般に、稍深発地震では応力降下が地震ごとに大きくばらつきますが、この地震ではその特徴が1個の地震の破壊過程の中にも見えることを示しています。
RAの部屋

今回は、UNIXに関する話題です。

1・GMTの日本語化
皆さんが研究の際に良く使われているグラフィックツールGMTでは、通常タイトルなどのラベルに、フォントが対応していないため日本語は表示されません。その不便さを解消すべく、深尾研の功刀君が日本語フォントを扱えるようにしてくれました。そこで、RAとしてはパッチを作って、それを当てれば簡単に日本語化できるようにしました。地震研のanonymousftpサイトから入手できます。
ftp:〃ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/eri/software/UNIX/src/graphlcs/GMT3.0-jpfont.patch

2・ewipeでOHPを作ろう!
Windowsでは、プレゼンテーションをしたり、OHPを作ったりする時に、PowerPointのようなツールが存在します。Unix上でも、ewipeというツールがあります。これは、Tc17.6πk4.2上で動くツールで、画面作成エディタで作った画面を表示できるもので、箇条書き、表、giffileの図の張り込み、マウスによる書き込みなどができます。現在、数式の表示やPSファイルにする際にちょっとしたテクニックが必要になりますが、文章を出すには全く問題ないと思われます。

3・FreeなUnixを走らせよう
いつもはワークステーションで走っているような計算を、ちょっとした自分のマシンで走らせたいんだけど、Solarisはお金がかかるからなあと思っている方には、freeのUnix(Linux、FreeBSD)を紹介しております。
http:〃www.eri.u-tokyo.ac.jp/RA/freeunix.html
をご覧ください。最近はinstallも簡単になったのでそんなに手間をかけずに大概のフリーソフトは動かすことができると思います。計算機の環境のことなどで御質問・御要望がありましたら、RA@eri.u-tokyo.ac,jpまでお願い致します。

使って便利なソフトウェア (3)〜LAPACK

学生からEICの計算機では「フリーソフトのEISPACKは使えないでしょうか?」と聞かれ、いまどきEISPACKとはめずらしいので更に聞いてみると、なんでも「参照している論文にそれを使って解いたと書いてあるので、使いたい」というものでした。

また、「ここに、行列計算のライブラリが入っている5インチのFDがあるのですが、5インチから3.5インチに変換できるDOS/Vマシーンはどこかにありませんか?」というので、見るとそのFDには、かつて大型計算機センター用に作られた、古いバージョンのLAPACKからとった連立方程式のライブラリが入っていた、といったような経験を、ここ数ヶ月の間に2度しました。

そこで今回は、そのLAPACKの周辺を取り上げましょう。LAPACKはLinearAlgebraPACKageの略で、冒頭にも述べましたようにフリーソフトです。Dongarraさんを中心に作られたFortranパッケージで、行列計算を高性能コンピュータ上で効率よく行えるようになっています。単精度、倍精度の実数、複素数、倍精度の複素数の4種類があり、行列計算の分野はほぼ網羅されています。ここで「ほぼ」といったのは、扱う行列が密行列、帯行列、三重対角行列を直接解法で解く場合だけで、
特別にスパース行列の性質を使うような解法は含まれていません。このLAPACKでは、行列の和や積を求めるといった基本演算部分をBLAS(BasicLinearAlgebra Sub-program)として、高速化しています。

そこで、Cray、SUN、またはHITACHl、Fujitsuなどのフレームメーカーや、コンパイラーやライブラリメーカーが、それぞれのマシーン用に高速化し、それぞれの名前をつけてライブラリとして販売しています。EICシステムに入っているLibSciはCray社がアレンジしたLAPACKですし、EICには入っていませんが、Apogee社のDSSLIB、SUN社のSUN PerformanceLibrary、HITACHIのMATRIXなどもLAPACKそのものです。このように各社のライブラリの名前は異なっていますが、プログラムの名前やアルゴリズムはまったく同じで、せいぜい違ってもパラメタの順序くらいです。したがって、EICシステムの場合は(勿論eic??でも)LibSciを使えば、並列化でも十分効力を発揮するように作られています。へたに他のマシーン用のLAPACKを使うと高速はおろか、結果の精度も保証されません。【以下、次号に続く】


センター計算機システムの更新について

来年(1999)3月には、本センターの計算機システム(Cray CS6400+HITAC M-640)の更新が予定されています。

現在のシステムは、地震予知研究のためのデータベースの作成と全国の研究者へのデータ提供、ならびに、全国共同利用の計算機システムに供されております。しかし、今日の計算機の性能の進歩はめざましく、今後も引き続きこのような要請に応えるためには、より性能の良いシステムに更新する必要があると考えております。

現在、仕様策定委員会を発足し、次期システムに求められる機能、性能等について検討を開始し
たところです。2月中は、どのようなものを導入すべきか議論を進める予定ですので、次期システムについてのご希望・ご意見がありましたら、以下のメールアドレスにお寄せください。
koshin@eri.u-tokyo.ac.jp
なお、今回の更新の際に、汎用計算機M-640を廃止することを検討しています。廃止した場合は、汎用計算機で作成した磁気テープ等が読めなくなる等の問題が予想されます。そこで、汎用計算機をまだ利用されている方は、その利用の現状や、今後の利用予定などをお教え頂ければ幸いです。