ニュースレターNo.26

《目次》
想定東海地震を巡る最近の動向(阿部 勝征)

古い地震記録(菊地 正幸)

「EIC計算機システムの利用法」講習会報告(鶴岡 弘)

最新地震カタログ情報(鶴岡 弘)

eic(SGI Origin 2000)並列計算機利用状況と機種更新について(鷹野 澄)

ウイルス情報(鷹野 澄)


 想定東海地震を巡る最近の動向
地震予知情報センター長 阿部 勝征
  静岡県下を震源域とする想定東海地震は,1854年以来発生しておらず,もう相当のひずみエネルギーを蓄積しており,近年の地殻変動からみて要注意の段階にある.その地震を巡る地震行政について最近の動向を三つ紹介したい.
  最初の話題は強化地域の見直しである.国の中央防災会議の「東海地震に関する専門調査会」は,最近の観測や研究から得られた科学的な知見を見直しに反映させて,想定東海地震の新しい震源域を発表した(2001年6月).従来の想定域より西方に50kmほど広がった「ナス」形になり,面積6割ほど増加した.震源域の見直しは1978年以来初めて.新しい震源モデルに基づいて,「専門調査会」は各地のゆれの強さや津波の高さを新たに算出した(01年12月).それをもとに,大規模地震対策特別措置法による地震防災対策強化地域(著しい地震被害が生ずるおそれがあり,警戒宣言に基づく避難・警戒体制を講ずべき地域,6県167市町村)の指定について見直しを速やかに進めるべきであると結論した.この検討結果を受けて,強化地域の見直しのための「東海地震対策専門調査会」は,防災上の観点から,強化地域として,震度6弱以上の地域,大津波の来襲地域,必要に応じて隣接した地域とすることにした.中央防災会議は,関係都県知事からの意見をふまえて,愛知県の大部分,三重県の太平洋沿岸の一部,東京都の伊豆諸島の一部などを追加し,8都県263市町村とすることにした(02年4月).強化地域の人口は600万人から1200万人へ増えた.今後,「専門調査会」は,地震予知のための観測の強化,予知を前提とした避難・警戒体制など,必要な制度面を見直していく.
 2つ目の話題は「観測情報」に関わる動きである.観測情報とは,想定東海地震に関連して,「判定会」の招集には至っていないが,観測データの推移を見守る必要が生じたときに気象庁が発表する情報である.これに関わる防災対応としては,半年にわたる議論を経て,「続報を逃さない体制をとる」こととした(98年11月).この情報は未だ発表されたことはないが,発表されたときには,住民が不安にかられてパニック状態に陥る可能性が無いわけではない.このことを懸念した内閣官房危機管理室や内閣府防災担当,気象庁は01年秋頃から観測情報のとらえ方を再検討し始めたようである.警戒宣言が発令される前の防災の立ち上がり情報としては,判定会が招集されたときに出される「判定会招集連絡報」があるが,観測情報をさらにその前倒し情報として活用しようというのである.報道機関の関心も高い.しかし,観測情報が出されてもその後に地震の発生と関わりがないと判断されることもあれば,判定会招集の前に必ず観測情報が発表されるわけでもない.観測情報への画一的な対応は容易ではない.
 3番目の話題は次の東南海・南海地震の話である.国の「地震調査委員会」は,太平洋沿岸を含む南海トラフ沿いの大地震について,「地震発生の可能性は年々高まっており,今後30年以内の発生確率は,東南海地震で50%程度,南海地震で40%程度に達する」という長期評価を公表した(01年9月).これらの地震は,もぐり込むフィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生する.地震の規模は,個別に発生した場合には,東南海地震はM8.1前後,南海地震はM8.4前後となり,同時に発生した場合には,M8.5前後となる.過去の事例では,時間的に同時または相互に近接して発生している.これらの大地震は中部地方から西日本にかけての広い地域に甚大な被害を及ぼす恐れがあるため,中央防災会議は「東南海,南海地震等に関する専門調査会」を設け,被害想定や防災対策の検討に着手した.一方,行政府ばかりでなく,立法府にも動きがある.「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案」が議員立法により6月19日に国会に上程された.この法案は,東南海・南海地震による災害から国民の生命,身体及び財産を保護するために,地震防災対策推進地域の指定,津波避難計画の作成,地震観測の強化,財政上の配慮などを定めて,地震防災対策の推進を目的としている.和歌山県知事らが与党三党幹事長に要望したのは5月17日であり,異例の速さで事が進んでいる.
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古い地震記録
 日本で近代的な地震観測が行われてから百年余りが経過した。百年という期間はちょうど日本沿岸で起こる大地震の再来期間に匹敵し、過去に記録が得られた大地震の次の世代の大地震が発生しつつある。
 地震研究所には約20万枚の古い地震記録(煤書き)がある。これらを整理しマイクロフィルムに納め、一般の利用者に公開している。一番古い記録は1887年である。図は1944年12月7日の東南海地震(M7.9)の東京(本郷)における記録である。倍率2倍の今村式地震計によるものである。初動のあと30秒余りして長周期の大きな振幅が現れ、振り切れている。東京は少なくとも4cm以上の振幅で揺れたことがわかる。
 このような記録が何カ所かで得られると、地震の発生源である断層の動きを推定することができる。図2は、気象庁の記録を基に得られた断層のすべり分布である。断層は熊野灘を中心に長さ百数十kmに及んでいるが、遠州灘には達していない。一方、1つ前の安政東南海地震では、地震や津波の被害などから、紀伊半島から駿河湾まで断層が動いたと推定されている。このことから、遠州灘から駿河湾にかけては、安政の大地震以来エネルギーが溜まり続け、すでに満杯の状態に達していると考えられている。これが想定東海地震の大きな根拠である。
図1 1944年12月7日東南海地震の記録 図2 断層のすべり分布
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◇◇「EIC計算機システムの利用法」講習会報告◇◇
 Origin2000を中心にしたEIC計算機システムについて,例年同様に初心者講習会を実施しました.講習会はこれからEIC計算機システムを使いたい人を対象としたコースで,5月16日(木)13:30-15:30に実施しました.講師は情報センターの鶴岡とSGI・SEの金が務めました.
 講習会の内容は,http://eic.eri.u-tokyo.ac.jp/headstart_manual/ に沿って
1.情報センターシステムの利用の仕方
2.Origin2000について
3.eicのバッチジョブNQEとその利用法
4.コンパイラとその利用法
5.並列化
6.数値計算ライブラリとその利用法
7.フリーウェアとその利用法
でした.講習会では,ノートPCを用いたデモなども取り入れ,バッチジョブの投入・ステータスの確認およびキャンセルの仕方を実演しました。
 講習会への参加人数は23名で,講習会資料請求が2名ありました.そのほとんどが新入生で,こちらの期待通りの講習会となりました.
 EIC計算機システムの利用法は,
  http://eic.eri.u-tokyo.ac.jp/
  http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/
で随時更新していますので,そちらを適宜ご参照ください.
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◇◇最新カタログ情報◇◇

http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/db/index-j.html
で利用できる地震カタログの最新情報です.
〇JUNEC(全国地震観測網地震カタログ) Up 
 収録期間:1985/07/01〜1998/12/31; 
 データ元:ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/junec/hypo/
〇NIED(防災科学技術研究所地震カタログ Up  
 収録期間:1979/07/01〜2001/06/30; 
 データ元:http://www.bosai.go.jp/center/kanto-tokai/data/index.html
〇JMA(気象庁地震カタログ)  
 収録期間:1926/01/01〜1997/09/30; 
 データ元:ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/jma/geppo/
〇JMA(気象庁一元化震源データ) Up
 収録期間:1997/10/01〜2002/03/31; 
 データ元:ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/jma/mirror/JMA_HYP/  
 *このデータの利用については,ニュース レターNo.9もごらんになってください.
〇HARVARD(HARVARD大CMT地震カタログ)Up  
 収録期間:1977/01/01〜2002/03/31; 
 データ元:ftp://128.103.105.101/CMT/
〇ISC(ISC地震カタログ)Up
 収録期間:1964/01/01〜1998/12/31; 
 データ元:ISC Catalogue 1964-1998 (CD- ROM)
システムおよびデータに関する質問・要望等はtsuru@eri.u-tokyo.ac.jpまでお願いします.
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◇◇eic(SGI Origin 2000)並列計算機利用状況と機種更新について◇◇
 本センターの全国共同利用計算機eic(SGI Origin 2000)は、昨年度もフル稼働でした。平成11年3月に導入してから昨年2月までの3年間のCPU利用時間のグラフを見ると、3年目となる昨年度は、夜間も休日も含め常に90%近い稼働率で、連日限界まで利用されていたことがわかります。このような状況ですから利用者の皆様には、待ち時間が長いなどで大変ご迷惑をおかけしたものと思われます。なお最後の3〜4ヶ月に若干利用が減少していますが、これは、一部の大口ユーザの利用自粛の協力があったこと、すでに3年が経過し最近の大型ジョブに対して十分な計算機資源を提供できなくなったこと、などによるものと思われます。このようなことから、来年3月には、さらにパワーアップした計算機に更新する予定です。それまで暫くはご不便をおかけしますがよろしくお願い致します。
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◇◇最近のウィルス情報◇◇
 地震研では昨年夏から地震研に来るメールを入口で駆除するようにしました。今年の1月から約半年間にウイルス添付メールとして検出された数をグラフに示します。1月28日と29日は、MYPARTYと呼ばれるウイルスでこの両日で約400通来ています。一方4月の中旬頃から増えているのは、KLEZと呼ばれるウイルスです。もう3ヶ月になりますがなかなか減りません。
 デマメール(デマウイルスとも呼ぶ)も横行しています。5月に、『jdbgmgr.exeというファイルはウイルスなので、削除しなさい』という内容のデマメールが送られてきました。PCでウイルス駆除ソフトを使っていれば、ウイルスが居座る可能性は低いので心配することはないのですが、知り合いからこういうメールが送られてくるとつい信じてしまうのが人情というものです。不審に思われたら、詳しい人に確認してもらうのがいいでしょう。またこういうメールを他の人に転送しないようにご注意下さい。
 6月下旬には、ホームページからダウンロードして感染するウイルスTROJ_DELALL(デルオール)が発見されました。このウイルスを起動させると、すべてのファイルが消されます。こういうウイルスの侵入を防ぐには、各人のPCでWeb上からファイルのダウンロードを行った場合にウイルスチェックをする以外にありません。ダウンロードしたファイルを不用意に起動しないようにご注意ください。
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  新人紹介
   (シニア・リサーチ・アシスタント)

名前:中川路(なかかわじ) のぞみ
趣味:スキー、旅行、ボクササイズ

よろしくお願いします。