ニュースレターNo.24



目次
新年のあいさつ(菊地 正幸)
全国地震等データ利用系システムの紹介(鶴岡 弘)
EIC地震学ノートより抜粋
鎌倉国際ワークショップ報告(菊地 正幸・山中 佳子)
地震研の入り口でのウィルス駆除開始2(鷹野 澄)
最新地震カタログ情報(鶴岡 弘)



新年の挨拶   地震予知情報センター 菊地正幸



 情報センターご利用のみなさま         あけましておめでとうございます
 本年もよろしくお願い申し上げます。

 
昨年は長引く不況と痛ましい事故、事件が相次ぎました。今年こそは希望の光と穏やかな日々の続くことを願いたいものです。

 とはいえ、地震火山活動をめぐる状況は必ずしも楽観できません。明日起きても不思議ではない、と言われてから20年余りの想定東海地震。その切迫性についてにわかにあわただしくなってきました。浜名湖付近の地下でプレートの引きずり込みが解消される「ゆっくり滑り」が見つかったこと、御前崎の沈降が鈍り始めたように見え、なおかつ、ある方程式を使って予測カーブを求めると、数年先に発散点が求まること、等々。

 もっともこれらが「東海地震」に直接結びつくのかどうかについては、まだ研究者の間で意見が一致していません。注目すべきことは、地下で起こっているわずかな変動もはっきりと捉えられるようになったことです。これは今後の地震発生予測にとって大きな進歩と言えます。折しも、中央防災会議で20年ぶりに想定東海地震の震源モデルが見直され、予想震度も改訂されました。

 地震を想定し被害を予測することは、めったに起こらない地震に対する防災対策の基本作業です。私はかねがね、被害予測と言うものが実際の防災にどのように役立つのかを知りたいと思っていました。昨年の年明け早々、広島市の早期地震情報システムを見学した際、一般的な被害予測とは別に、ほぼ50年ごとに繰り返す「芸予地震」を想定した対策を講じていることに強い関心を持ちました。前の芸予地震(1905年)からもうすぐ50年になる、ということで立てた対策です。そして、実際に昨年3月23日に芸予地震(M6.7)が起きました。日本の大都市で、想定地震が実際に起こったのはこれがはじめてだと思います。私の依頼に対し、まもなく広島市から貴重な資料が送られてきました。『平成13年芸予地震と広島市地震情報ネットワークシステム−地震の概要と被害の分析ならびにシステムの検証−』と題する全300ページほどの報告書です。目下読ませて頂いているところです。私はこの広島市の経験が必ずやほかの都市や国の災害対策にも参考になる、またそうしなければいけないと思っています。



全国地震データ等利用系システムの紹介(http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/wavedb.html)
現在,全国の大学地震観測点の連続波形データは,衛星通信による地震観測テレメータシステムによってリアルタイムで集配信が行われています.この連続波形データは,UNIXシステムで動作可能なWINシステムによってリアルタイムで自動処理されます.処理結果として,連続波形データ,イベント波形データ,検測データ,震源データが作成され,独自のフォーマットでデータベース化されます.紹介するシステムは,地震予知情報センターが中心になって開発したもので,WEBのブラウザからこれらのデータベースにアクセスするシステムです.そのため,インターネットに接続されたコンピュータから,WINシステムにより作成されるこれらのデータベースにリアルタイムかつダイレクトにアクセスすることができます.また,このシステムでは,データ検索処理を追加していますので,より柔軟にデータを取得することができるようになっています.


図1  イベント波形データ選択画面


現在,このシステムは,東京大学地震研究所のほかに北海道大学,弘前大学,東北大学,名古屋大学,京都大学,高知大学,九州大学,鹿児島大学でも稼働しており,それぞれの地域に適したパラメータでデータが生成されています.


図2 イベント波形のプレビュー画面

これらのシステムには,ユーザ登録をしてからログインします.なお,ゲストアカウントでログインすることも可能となっていますので,ちょっとシステムを試してみたいときには,ゲストアカウントでログインしてみてください.

システムにログインすると,震源情報,イベント波形,連続波形,WINシステム,チャネル表,観測点情報,観測点設定,チャネル設定,地震活動マップのメニュー項目があり,通常のデータ利用に必要十分な機能が備わっています.

図3 地震活動マップ表示画面


図1−3にシステムの利用の様子を示します.なお,波形のプレビュー等はシステムの機能で可能となっていますが,これらのデータをダウンロードして利用する場合には,ダウンロードされたデータがWINフォーマットとなっていることに注意してください.
波形フォーマットの詳細については,http://eoc.eri.u-tokyo.ac.jp/WIN/index.html (システムのページからリンクされています).でご確認ください.その他システムへの質問がありましたら,tsuru@eri.u-tokyo.ac.jp までご連絡ください.




EIC地震学ノートより抜粋(修正)

EIC地震学ノート No.111   Nov. 15, 2001

遠地実体波解析
 2001年11月14日チベットの地震(Ms7.9)

概略・特徴:11月14日17時26分(現地時間)チベット高原(崑崙Kunlun山脈)を震源とするMs7.9の地震がありました。震源地は標高5千mを越える山岳地帯で、今のところ被害状況は不明です。USGSによる速報震源は次の通りです。

     
発生時刻  震央 深さ Ms
11/14 03:26:10 UT 36.01N 90.50E shallow 7.9

データ処理:IRIS-DMCから21点の広帯域実体波(P波上下動)記録を収集しました。かなり複雑な波形です。主破壊は1分ほど後に来ます。まず点震源を仮定してメカニズムを決め、そのあと断層面を固定して断層滑り分布を求めました。

結果:下図に結果を示します。主な震源パラメーター は以下の通りです。

 震源の深さ    H0 = 20 km
 (走向、傾斜、すべり角)=(89, 88, -2)
 地震モーメント  Mo = 3.9x10**20 Nm
          (Mw =  7.7)
破壊継続時間    T = 約100s
 主破壊部分の断層面積  S = 120kmx30km
     最大滑り  Dmax = 6.1m
       平均滑り  D = Mo/μS = 3.6m
       応力降下 Δσ=4.5MPa

解釈その他:はっきりした東西の指向性が見られることから、断層の走向は東西方向であると考えられます。
メカニズムはほぼ純粋な左横ずれ型です。
ちょうど4年前、今回の震源の西方約300kmでMs7.9の地震がありました。そのときのMwは7.3です。

現地調査報告
静岡大学理学部の林愛明さんによると地震断層帯は既存の昆侖山断層帯沿いに現われ、断層の走向・傾斜はN70-85W, 75-90N、ほとんど左横ずれ,震央より60-80km東部で左横ずれの最大量約8m、E93°00',N35°46'の地点で地震断層帯は数本の主断層から構成され, 断層帯としての横ずれ変位量は最大約15m、地震断層帯の長さは120km以上とのことです。我々の得た震源パラメーターと概ね整合的です。



鎌倉国際ワークショップ報告


kamakura2001年12月3,4日に鎌倉プリンスホテルで科学技術振興調整費「アジア・太平洋地域に適した地震・津波災害軽減化技術の開発とその体系化に関する研究」(略称 EQTAP)の第4回国際会議が開かれました。


               


今回はこのプロジェクトの中間成果報告会がメインでした。
地震研からは東原・菊地・加藤・森田・山中が参加し、山中が大地震の特集HPなど地震研の取り組みを報告しました。



最新地震カタログ情報
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/db/index-j.html で利用できる地震カタログの最新情報です.
JUNEC(全国地震観測網地震カタログ) 
 収録期間:1985/07/01〜1996/12/31;データ元:ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/junec/hypo/
NIED(防災科学技術研究所地震カタログ Up  
 収録期間:1979/07/01〜2000/12/31;データ元:http://www.bosai.go.jp/center/kanto-tokai/data/index.html
JMA(気象庁地震カタログ)  
 収録期間:1926/01/01〜1997/09/30;データ元:ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/jma/geppo/
JMA(気象庁一元化震源データ) Up
 収録期間:1997/10/01〜2001/07/31;データ元:ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/jma/mirror/JMA_HYP/  
 *このデータの利用については,ニュース レターNo.9 もごらんになってください.
HARVARD(HARVARD大CMT地震カタログ)Up  
 収録期間:1977/01/01〜2001/07/31;データ元:ftp://128.103.105.101/CMT/
ISC(ISC地震カタログ)
 収録期間:1964/01/01〜1996/12/31;データ元:ISC Catalogue 1964-1996 (CD- ROM)
システムおよびデータに関する質問・要望等はtsuru@eri.u-tokyo.ac.jp までお願いします.



地震研の入り口でのウイルス駆除開始(2)

 8月21日から地震研の入り口でウイルス駆除を開始しました。1日にどれくらいの件数が駆除されているかを示したのが下図です。
SIRCAM型ウイルスの猛威は9月でほぼ終わり、11月20日頃からALIZとBADTRANSが流行しています。




計算機の継続利用申請について
平成14年度のEIC共同利用計算機システムの利用継続申請を受付けます。利用申請は、下記のホームページから行うのが簡単です。
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/
なお、地震研究所の職員の方は自動継続となりますので、継続申請は不要です。学生の方は継続利用申請をしていない場合、4月から利用できなくなりますのでご注意下さい。