新しい世紀を迎えて
地震予知センター長 菊地 正幸


情報センターご利用のみなさま 
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願い申しあげます


昨年日本では火山噴火が相い次ぎました。3月の有珠山に続いて、6〜8月には三宅島、9、10月には北海道駒ヶ岳が噴火しました。有珠山や三宅島の噴火では事前に的確な火山情報が出され、住民の避難が整然と行われたことは不幸中の幸いでした。残念ながら地震の場合にはまだそのような的確な直前情報を出せる状況にはありません。何と言っても、地震現象そのものが確率的な要素を持っている上に、地震の繰り返し間隔を超えた観測データが少ないためです。

 とはいえ、近代的地震観測が始まってから1世紀が経ちました。1世紀という長さは地質学的時間から見ればほんの一瞬に過ぎませんが、地震の再来間隔から見れば十分意味のある時間長です。海溝沿いのプレート間地震では同じ場所で大地震が再来し始めています。

 ここ数年、情報センターのスタッフを中心に、地震研究所保有の古い地震記録を整理し利用者が手軽にコピーできるようマイクロフィルム化してきました。総数約20万枚です。検索システムとともに近く公開する予定です。最近の画像処理技術の進歩により、こみ入ったアナログ波形でも精度良くデジタイズすることが可能になってきましたので、古地震記象は過去の地震の起こり方を調べる上で強力なデータになるものと期待されます。


 20世紀に日本で起こった甚大被害地震(犠牲者千人以上)は、1923年の関東大地震から1995年の兵庫県南部地震まで9回を数えます。その前の世紀はどうだったかと理科年表を見たところ、明治三陸地震津波を含めて8回、さらにその前の世紀は元禄の関東地震など7回ありました。要するに甚大被害地震は世紀単位で見る限り一向に減っていない、むしろ増えているということです。関東大地震を契機として設立された本研究所に勤務する者として、21世紀こそは地震災害の軽減、とりわけ甚大被害地震をなくすことに少しでも貢献できればと願う次第です。