EICニュースレター No.10


本号の目次

新年のあいさつ (菊地正幸)
平成11年度計算機利用継続のお知らせ
流星バースト通信(鷹野澄)
自動更新される計測震度情報ホームページの紹介(功刀卓)
RAの部屋〜Unix マシンのセキュリティ対策〜(関根秀太郎)
センターからの連絡事項



新年のあいさつ

地震予知情報センター長 菊地正幸

あけましておめでとうございます   
本年もよろしくお願い申しあげます  

情報センターでは,現システム(Cray CS6400+ HITAC M-640)から新EIC(Cray Origin 2000)への移行作業が急ピッチで進められています.これにより計算機の総合性能は約1桁アップする見込みす.更新にあたりまして利用者の皆さまにはいろいろご不便をおかけしますが,よろしくご理解のほどお願い申しあげます.

ところで,あまり目立たないことですが,今回の機種更新では磁気テープ利用が廃止されることになります.ある意味で時代の流れを象徴するものと言えます.私個人としては,かつて,パンチカードの利用がなくなるときほどの不安(未練?)はありませんが,ひと頃,固定ブロック形式だとかレコード長がどうのといったformatに悩まされたことを思いだし,感慨ひとしおです.

おりしも西暦1千年代から2千年代へカウントダウンが始まったいま,今後1千年の間にどのような情報媒体が登場し消えていくのかと思い巡らしてしまいます.大量のデータ流通や処理に便利な媒体が次々に登場しますが,1千年スケールでの保存という観点からは,書類に勝るものはまだ出てきていないように思われます.



平成11年度計算機利用継続申請のお知らせ
来年度の計算機利用申請継続手続きを始めます.締め切りは3月20日です.地震研究所教職員の方は継続申請は不要ですが,それ以外の方で来年度も引き続き利用を希望される方は,必ず継続手続きをしてください.  

なお平成11年度の共同利用で,すでに申請書を出された方は結構です.

詳しい内容は,地震予知情報センターのホームページ
  http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/index-ja.html
をご覧ください.


新人 紹介  (シニア・リサーチ・アシスタント)
名 前 木村 仁恵(きむらひとえ)
趣 味 観劇・水泳
よろしくお願いします。



流星バースト通信


通信(Meteor Burst Communication)は,流星の飛跡に残る電離気体柱(流星バースト)による低VHF帯電波の反射現象を利用した無線通信方式です.日常目には見えないが1日約1012個もの宇宙のチリが,流星として大気圏に突入しているといわれています.その多くはミリグラム以下の極めて小さなチリですが,そのチリの飛んだあとの高度約100kmあたりに,長さ数十kmの細長い電波の反射体すなわち流星バーストが形成されます.この流星バーストは数秒間で拡散してしまいますが,その短時間の反射体を利用して,図1に示すように距離にして約2000km以内の2点間の通信を行なおうという訳です.従って流星バースト通信は会話音声のような連続で即時性の通信には適しませんが,小量でかつ数秒から数分程度の時間遅れを問題としないようなデータの伝送に利用可能です.また1つの親局に対して多数の子局を持つような場合に効率よく運用できるようです.

我が国においては,流星バースト通信を利用した観測データ収集システムはまだ構築されていませんが,米国では1980年頃からロッキー山中に置かれた多数の無人気象観測点からのデータ収集に利用され成功をおさめています.我々は流星バースト通信の利用可能距離の長い点,ならびに多点からのデータ収集能力に着目し,我が国周辺の離島や遠方の海上に多数の観測点を設置する場合のデータ収集システムとして利用可能ではないかと考えて研究を開始しました.

昨年6月に共同研究者の静岡大学工学部福田明教授の研究室の実験システムを利用して,青森県八戸市から小笠原父島までの約1500kmの間で,流星バースト通信路の利用可能性に関する基礎実験を行いました.その結果データ通信に利用可能な流星バーストが,八戸−父島間で1分間平均2.4個あり,その反射体の継続時間が平均0.36秒あるということが確認されました.また参考のために行った浜岡から父島間約800kmの場合は,1分間平均9.6個が利用できその反射体の平均継続時間が0.24秒であることが確認されました.これから,通信方式にもよりますが,八戸−父島間の場合1分間に約400バイト,浜岡−父島間の場合は1分間に約1100バイトのデータ転送が可能であると見込まれます.ただし流星バーストの発生は,日変化(朝の方が夕方より多い)や,季節変化(夏の方が冬より多い)があることが知られておりますので,年間を通じたデータ転送を行う場合のデータ転送能力の見積りは容易ではありません.

今後我々の共同研究では,このような基礎実験を長期間継続して行うことを計画しています.また,多点データ収集システムの構築に必要な安価な流星バー スト通信装置の開発にも着手する予定です.ご意見やご感想などありましたら本センターの鷹野までお寄せ下さい.

参考資料 鷹野・長澤・椋本・福田1998:流星バースト通信による離島からの通信実験,地震学会秋季大会,P08


自動更新される計測震度情報ホームページの紹介

地震発生直後に発表される震度情報は多くの防災関係機関が初動体制を整える上で重要視している項目の一つで,みなさんにも馴染みの深い強震動指標だと思います.また,現在の震度は地震計の記録から自動的に計算できるようになっています(計測震度). 私たちは震度情報を自動的に計算してホームページに掲載するシステムを運用していますので紹介します.

データは広く一般に公開されている防災科学技術研究所のK-NETの強震記録を用いています.システムはK-NETからのデータ収集,震度計算,震度分布の地図へのプロットを完全自動で行なうため管理者が不在でもデータ処理が行なえます.ただし,K-NETのデータ公開はリアルタイムでないため地震発生後すぐの結果公開には対応していませんが,おおむね数日後には震度分布図をホームページで見ることができます.震度計算は震度問題検討会検討結果最終報告に基づき行なっています.

まず、三成分の地動加速度記録にフィルター処理をして地震動の周期の効果を補正した記録を得て,それらをベクトル的に合成して振幅の時間変化の波形を作ります.次に,合成した振幅波形から継続時間が0.3秒になるしきい値を求めます.ここで用いるしきい値とは,ある値を与えたときその値以上の強さの振動が0.3秒間続くようになるとき,与えたある値をしきい値として定義します.最後に,しきい値から計測震度を求めます.従来の最大加速度を震度に換算する式(河角の式など)との違いは,三成分の合成値を用いること,周期の効果をフィルターで補正すること,最大値ではなく継続時間を考慮した値(上述のしきい値)を用いることです.

紙面の都合で処理の概要のみを述べましたが,フィルターの定数や処理の詳細は「震度を知る」(ぎょうせい)という本が参考になります.また,計算式は理科年表にも掲載されていますので,興味のある方は御覧になって下さい.震度分布図の作成は,汎用の地図描画ツールのGMT (Wessel and Smith,1991)を日本語が扱えるように改良したものをもちいて行なっています.強震解析などではどの観測点のデータが使用可能か,余震と本震の強震記録が使用可能な観測点はどのくらいあるか,などを知りたいことが多いため,工夫をして本震と余震の関係にある地震の震度分布がなるべく同一縮尺かつ同一領域の地図上に描かれるようにしています.さらに,データがない観測点の表示や観 測点名の日本語表記もしています(付図).

当システムでは強震記録を保存しているので他の強震指標(例えば,SI値,応答スペクトル)なども算出し比較することができます.これらの比較は震度の強震指標としての妥当性を検証する上でも重要なので今後は,各種の強震指標の自動算出も検討する予定です.K-NETのデータを使うにあたって,私たちはK-NETのデータをSAC形式に変換するプログラムを作成しています.また,過去のK-NETのデータは地震ごとにまとめて保存してあります.これらのプログラムを使いたい方,またはK-NETから大量のデータをダウンロードするのが大変,といった地震研究所所属の方はご相談ください.

この震度情報は
http://komoku.eri.u-tokyo.ac.jp/smotion/smotion.html(”強震記録による計測震度分布”)

で見ることができます。これは東京大学地震研究所のホームページで地震予知情報センター(地震情報)、地震地殻変動観測センター(リアルタイム地震情報)、地震火山災害部門(計測震度のページ)からたどることもできます。衛星テレメーターデータを用いた自動震源決定や伊東沖の地震活動などの情報も提供していますので,合わせてご活用頂ければ幸いです.

また,「こんな情報がほしい」といった意見があれば上記URL管理者までおよせ下さい.

〈文責:功刀 卓/海半球観測研究センター D2〉 


RAの部屋


Unix マシンのセキュリティ対策

私達が毎日メールを読んだり, 仕事に使ったりしているネットワークに繋がったコンピュータは外部からの侵入に毎日晒されている. と言っても信じてもらえるでしょうか? 残念ながら, インターネットに繋がっているマシンの向こう側にいる人たちがすべていい人であるとは限らないので, そういう人達が世界の各地から侵入しようとしているのです. 「私のマシンには重要なデータが入ってないから大丈夫. 」ってことは侵入者には関係ありません. そこを踏み台にして, 他のもっと重要そうなマシンに侵入しようとするのです. もちろん侵入されたマシンには侵入したマシンの名前しか分からないので, 非難されるのは踏み台にされていたマシンを持っている人になるわけです. そのような事にならないために, 今年度は最低限必要なセキュリティ対策をすべてのマシンに導入するように, 情報センター及びSE の方々と協力してきました. その対策とは, 「sendmail の入れ替え」 と
「tcp_wrapper の導入」 です. この二つの対策を施すだけでも, 侵入者にとっては脅威になるのです.これらの導入に関するホームページは, 以下のところにあります.

sendmail について
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/security/sendmail/
tcp_wrapper について
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/security/tcp_wrapper/

まだ対策を施していない UNIX マシンが近くに存在しましたら, 至急対策を講じてください. よろしくお願い致します.  

さて, セキュリティソフト関しての RA からは, ssh  ( Secure Shell ) というソフトをお勧めします. このソフトを導入すると, ログインパスワードが暗号化されて送信されるため, 比較的安全に通信をすることができます. 外部のマシンからよく地震研に telnet で入って仕事をするような人は, 是非ともこのソフトを導入して使って頂いた方がいいでしょう. ただ, このソフトに関しては各マシンごとに個別の認証データ(実印のようなもの)を作らなければならないので, 「sendmail のように入れ替えてください. 」というわけにもいきません. そこで,

http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/security/ssh/

にインストールの仕方を書いておきました. これを参考にして, ssh を導入してみてください. ちなみに eic の各マシンにはすでに ssh は導入されておりますので, それで一度使ってみるのもいいかもしれません.  計算機の環境のことなどでご質問・ご要望がありましたら, RA@eri.u-tokyo.ac.jp までお願い致します.

< 文責: 関根 秀太郎/地震火山災害部門 D2 >



センターからの連絡事項

EIC計算機システムの更新スケジュール EICのMathematica ご利用の皆様
2月25日(木) 10時
現EIC(Cray CS6400)サービス終了
(M-640は23日にサービス終了)

3月 1日(月) 13時
新EIC(Cray Origin 2000)サービス開始 (端末は2日よりサービス開始)

更新期間中はご不便をおかけしますがよろしく お願いします.
情報センターでのMathematica 3.0のサービスは2月16日をもって終了いたします.これは教育センターのサイトライセンス契約の満了に伴う処置です.

現在MathematicaはPCやMACに限った場合24000円でstudent版を導入することができ,しかも機能的にはEICやWSに入っていたものとまったく変わりがありませんのでそちらへの利用法でお願いします.