EIC地震学ノート No.66                    Sep. 21, 99

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------

9月21日台湾の地震(Ms 7.6)

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● 概略・特徴: 9月21日未明(現地)の台北の南西140kmでMs7.6の地震があり、
死者不明者千人を超える甚大被害が発生しました。USGSによる速報震源は次の通りで
す。
     発生時刻         震央    深さ    Ms
 0920 17:47:19 (UT)   23.8°N  121.1°E    5 km   7.7 

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録のうち、24地点のデータ
(P波上下動)を用いて解析しました。観測点分布は概ね良好です。小さい初期破壊
から急激に大きな数秒間隔のパルスが3,4個が見られます。なぜか安定したメカ
ニズム解が決まらないため、ハーバード解のメカニズム用い、断層面上のサブイベ
ントの時系列を求めました。
P波初動の再読み取り値から震源(初期破壊点)の位置を決め直すと、北へ2.0km、西
へ21.8km移動します。

●結果: 結果を図1に示します。主な震源パラメータ
は次のとおりです。

  初期破壊点(震源) = 23.82°N, 120.89°E
 深さ          H = 11 km
 走向、傾斜、すべり角 =  (26, 27, 82)
         東西圧縮の低角逆断層
 地震モーメント  Mo  =  2.4 x10**20 Nm  (Mw = 7.5)
  破壊継続時間(主破壊) T  = 28 s
 主破壊の断層面積 (v=2.5km/s)S = 80x40 km*2
 食い違い       D = Mo / μS = 2.2 m (μ=34GPa)
 応力降下      Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 3.3 MPa

● 解釈その他:東西圧縮の逆断層です。ここでは東傾斜の断層面(東側が西へ乗り上
げる)を取りました。およそ3,4個の多重震源です。初期破壊点から速度2.5km/sで、
主に北に向かって破壊が進行したと推定されます。モーメントはほかの機関の値より稍
小さめです。それでも兵庫県南部地震の約10倍に相当します。応力降下は3.3MPaで、
内陸の地震よりはむしろ、海溝沿いの地震の標準値に近い値です。

参考 : Yagi & Kikuchi, 1999
                             (文責:菊地・山中) (追記 99/09/23) 9月22日8時14分(現地時間)に、これまでの最大余震(Ms6.3) が発生しました。本震の震源域の下限で起った低角逆断層と考えられます。 (追記 99/09/27) 9月26日8時少し前(現地時間)に、さらに大きい余震(Ms6.4)が 発生しました。本震の震源断層よりはやや急傾斜の断層面を持ちます。 これらの余震の解析結果を本ノート#67に示します。