EIC地震学ノート No.62s              August 26, 99

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(改訂版)◆ --------------------------------------

8月17日トルコの地震(Ms 7.4)

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●震源諸元: 地元の研究所(ボアジチ大学地震研究所KOERI)による震源情報は次の通
りです。再解析にあたっては、この情報を用いました。

    発生時刻       震央         深さ       M
 08/17 00:01:40 UT   40.77°N   29.97°E    17km     7.4 

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録のうち、15地点のデータ
(P波上下動15, SH波5)を用いました。観測点分布は概ね良好です。暫定解で求めた単
発の主破壊に加えて、小さな初期破壊と、30〜40秒遅れの孤立した破壊が得られました。

●結果: 結果を図1(破壊の時空分布)と図2(波形の比較)に示します。最初の部
分(約20秒間)の主な震源パラメータは次のとおりです。

 走向、傾斜、すべり角 =  (88, 80, 179)
 地震モーメント  Mo  =  1.8 x10**20 Nm  (Mw = 7.4)
  破壊継続時間(主破壊) T  = 12 s
 深さ          H = 12km
 主破壊の断層長(非対称双方向伝播)L = 60km
 断層面積(W=20kmと仮定)  S = 60km x 20km
 食い違い       D = Mo / μS = 3.3 m (μ=46GPa)
 応力降下      Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 11 MPa

● 解釈その他:いくつか検討すべき課題があります。

(1) 余震の広がりは震源(初期破壊点)から両側にそれぞれ100kmほどに及んでいるの
 に対し、上で得られた主要なずれ破壊(アスペリティ)の範囲はおよそ60km程度と
 狭い。
(2) 地表に現れた"地表地震断層"では、食い違いの大きさは、最大で2.6 m程度である
 のに対し、上記の見積もり値(平均値で3.3m)は大きめである。

 (1) に関しては、震源の決定精度や、余震とアスペリティ領域が必ずしも一致しな
い(アスペリティの周辺に余震が起こる)ことを考慮する必要があります。
 (2) に関しては、地下のアスペリティでのずれがそのまま地表のずれとなって現れる
とは限らないことに注意する必要があります。
 いずれにせよ、どの範囲がどれだけずれたかは、今後の地震活動を考える上で大変重
要なポイントです。現地観測(余震、地表調査、測量など)の結果が待たれます。
                             (文責:菊地・山中)
(補足 99/09/06)
  トルコのMinistry of Public Works and Settlementによる強震計記録がWebで公
開されました。その中には断層のごく近傍の記録もあります。
Izumit(震央)とSakarya(東 40km付近)の加速度速度変位 を示します。
ライズタイム約3〜4秒のなめらかな断層運動が特徴的です。
変位から推定される食い違いの量はIzumit,Sakaryaでそれぞれ3m, 4mになります。