EIC地震学ノート No.141
EIC地震学ノート No.141 Nov. 02, 03
東大震研情報センター
◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------
10月31日福島県沖地震(Mj6.8)
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● 概略・特徴: 10月31日午前10時6分に、福島県沖で Mj6.8の地震が発生
しました。宮城県では震度4を記録しました。気象庁によると鮎川で30cm程度の津波
が観測されたということです。気象庁による速報震源は次の通りです。
発生時刻 震央 深さ M
03/10/31 10:06 (JT) 37.8°N 142.8°E 30 km 6.8
●データ処理: 今回の地震に関しては、IRIS-DMCのHPからデータをとることが
できませんでした。なんらかのトラブルだと思いますが、2日ほど待ってもデータ
が得られませんでした。そこで IRISのLISSシステムによってリアルタイムで送られ
てくる広帯域地震計データから波形を切り出して(21地点のP波上下動)解析しました。
●結果: 破壊開始点として気象庁の震源を仮定して解析を行いました。その結果
を図に示します。主な震源パラメータは次のとおりです。
走向、傾斜、すべり角 = (204, 14, 92)
地震モーメント Mo = 3.3 x10**19 Nm (Mw = 6.9)
破壊継続時間(主破壊) T = 23 s
深さ H = 25 km
断層面積 S = 60 km x 70 km
食い違い Dmax = 0.6 m
●解釈その他:北北東−南南西の走向をもつ西傾斜の低角逆断層です。太平洋プレートの
沈み込みに伴うプレート間地震と考えられます。今回の地震では2つまたは3つの
アスペリティ(それぞれはMw6.6程度)がすべったと考えられます。これらを地図上
にプロットすると下図になります。図にはこの付近で過去に起きた1936年、1978年、
1981年宮城沖地震のすべり分布(Yamanaka and Kikuchi, 2003)も併せて示してあり
ます。この図から今回は上記3つとは別の隣り合ったアスペリティがすべったものと
考えられます。現段階では詳しい余震分布がわかりませんが、これらと比較して
再検討を行っていく予定です。
また、図中の青い★は1900年以降に起きたMj6.8以上の地震の震央、緑の★
はMj6.6以上の地震の震央分布です。今回の地震の付近では1948年にMj6.6, 1962年
にはMj6.8の地震が起きています。今後これらの地震についても解析をしていきたい
と思っています。
(文責:山中)
PS:
今回はIRIS-DMCからデータがとれず四苦八苦してしまいました。菊地さんとは生前
からLISSのシステムによるリアルタイム解析の議論をしていました。本当はもうとっ
くにシステムを完成させているはずだったのに…。今後はIRIS-DMCのHPを頼らなくて
も解析ができるようにシステムの構築をしていこうと思います。菊地さんの目指した
リアルタイム地震学に少しでも近づけるよう努力したいと思います。