EIC地震学ノート No.135                May. 27, 03 (Jun. 16, 03 改訂)

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------

5月26日宮城県沖地震(Mj7.0)

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● 概略・特徴: 5月26日午後6時24分(日本時間)に、宮城県沖で Mj7.0の大地震が発生しました。岩手県、宮城県では震度6弱を記録するなど 広い範囲で大きな揺れを感じました。東京でもかなりの揺れを感じました。 気象庁による速報震源は次の通りです。

    発生時刻           震央      深さ    M
 03/05/26 18:24  (JT)   38.81°N  141.65°E     71 km    7.0 
●データ処理: IRIS-DMCから収集した19地点の広帯域地震計記録(P波上下動19 とSH波3)を用いて解析しました。

●結果: 破壊開始点として気象庁の震源を仮定して解析を行いました。その結果をに示します。主な震源パラメータは 次のとおりです。

 走向、傾斜、すべり角 =  (190, 72, 101)/(338, 21, 60) 
 地震モーメント  Mo  =  3.8 x10**19 Nm  (Mw = 7.0)
  破壊継続時間(主破壊) T  = 10 s
 深さ          H = 75 km
 主破壊の断層長          L = about 15 km
 断層面積            S = 15 km x 15 km
 食い違い       Dmax = 2.7m
 応力降下         Δσ = 28 MPa

● 解釈その他:沈み込む太平洋プレート内の地震と考えられます。 今回の地震は潜り込み方向に働く圧縮力による震源メカニズムです。若干ながら 急傾斜の断層面の方が波形の一致がよくなりますが、その差は有意では ありません。この付近で起きたプレート内地震としては最大規模です。 右図は今回のすべり分布(赤いコンター)と気象庁による本震後1日以内に起きた 余震の分布(速報値 M>=4.0;灰色丸)です。
今回の地震は1978年6月12日の宮城沖地震(Mj7.4)の地震のアスペリティの 北に位置します。(下図のコンターは1978年のすべり分布。コンター中 色の塗られたところが1978年のアスペリティ) 1978年6月12日の宮城沖地震(Mj7.4)の地震の4ヶ月前の2月20日(Mj6.7)にも 今回よりやや海溝側でやはりプレート内地震が起きました。今回の地震が 近い将来起こるとされる宮城沖地震にどう影響するのか気になります。

(文責:山中・菊地)      
PS
この地震が起きたとき、ちょうど横浜に電話をしている最中でした。 大きな揺れを感じたので、「地震ですね」と言ったとき横浜では まだ揺れを感じていませんでした。東京でかなり揺れはじめ、地震研の 扉や窓ががたがたすごい音を立て始めたのが電話口でも聞こえたらしく、 「大きな音がしていますね」と言った途端「横浜でも揺れ始めました」と 言われました。これで我々はすぐに震源が北であること(東京の方が横浜より 震源からの距離が近い)を知りました。 今現在気象庁が進めているナウキャスト情報の有効性を体感した気がしました。(Y.Y.)