EIC地震学ノート No.103           Apr.4,'01 (rev. 01/04/05)

東大震研情報センター

◆近地地震波解析(暫定版+補足)◆ ----------------

  2001年4月3日静岡県中部の地震(Mj 5.1)

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●概略・特徴: 3日深夜11時57分、静岡県を震源とする地震があり、最大震
度5強を記録するなど東海を中心に関東近畿にわたる広い範囲で地震を感じました。
報道によると、転倒などにより負傷者8名が出たとのことです。気象庁の震源は次
の通りです。

  発生時刻      震央     深さ   Mj
 04/03 23:57(JT)  35.00°N 138.11°E 33km   5.1

●データ処理: 防災科学技術研究所の広帯域地震観測網から、震央距離が100km
未満の3点(富士川FUJ、中伊豆JIZ、都留SGN)の地震波形データを収集しました。
P波上下動とSH波の変位波形は、幅約1秒のパルスを成しています。点震源を仮
定してメカニズムと震源時間関数を求めました。

●結果: 図1に結果を示します。メカニズム解は「横ずれ成分を伴った東西引っ
張りの正断層」です。主な震源パラメータは次のとおりです。

 (走向、傾斜、すべり角)=(330, 52, -151)/(221, 67, -41)
 地震モーメント   Mo = 6.5x10**16 Nm  (Mw = 5.1)
  破壊継続時間    T = 1.2 s
 震源の深さ    H = 33 km
 断層の長さ(双方向破壊v=2.5km/sを仮定) L=0.8x2.5x2=4 km
 断層面積(W=L/2を仮定)  S = 4km x2km 
 平均食い違い  D = Mo /μS = 0.13 m (μ= 64GPa)
 応力降下    Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 7.2 MPa

●解釈その他: 震央と深さから判断して、潜り込むフィリピン海プレート(スラ
ブ)内部の地震と考えられます。先月の芸予地震と同じ型です。応力降下もプレー
ト間地震に比べて高めです。
 今回の震源付近では、1917年(M6.3)、1935年(M6.4)、1965年(M6.1)のほか、1993
年、1996年にM4クラスの地震が起こっています。今回の地震と合わせて、これら
の地震がどのようなメカニズムや深さで起こったのかは、想定東海地震の仕組みと
現状を評価する上で大変重要と思われます。我々は目下、気象庁の古い強震計記録
を使って、M6クラスの地震(1935年)を調べているところです。
                           (文責:菊地・山中)
<<関連ノート>>
1.1993年8月7,8日静岡県の地震(M3.7,4.1) YCUレポート#25
2.1996年5月27日静岡県中部(Mj4.2)の地震 YCUレポート#55
3.1935年7月11日静岡県の地震(Mj6.?) 図2
    (走向、傾斜、すべり角)=(175, 60, -160)/(75, 73, -32)
    地震モーメント  Mo = 2.9x10**19 Nm  (Mw = 6.3)
     破壊継続時間   T = 7 s
    震源の深さ    H = 20 km