東大震研情報センター
◆遠地実体波解析(再改訂版)◆ ---------------------
2001年3月24日芸予地震(Mj 6.4)
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●概略・特徴: 24日午後3時28分ごろ、安芸灘を震央とする地震があり、最 大震度6弱を記録するなど西日本の広い範囲で地震を感じました。報道によると死 者2名、負傷者160名余です。気象庁の速報震源は次の通りです。 発生時刻 震央 深さ Ms 03/24 15:28(JT) 34.1°N 132.7°E 60km 6.4 ●データ処理: IRIS-DMCから21点の広帯域実体波(P波上下動)記録を収集しま した。多重震源の様相を呈しています。メカニズムの変化を許したインバージョン でややメカニズムの異なる2つのサブイベントが得られました(図2参照)。次に 平均的なP波節面の1つを断層面(西傾斜面)と仮定して、断層すべり分布を求め ました。再改訂版では断層すべりのベクトルを可変にしました。 ●結果: 図1に結果を示します。メカニズム解は「ほぼ東西引っ張りの正断層」です。 左下のすべり分布図は西側から見たものです(右が南、左が北)。主な震源パラメー タは次のとおりです。 (走向、傾斜、すべり角)=(179, 55, -82)/(344,36,-102) 地震モーメント Mo = 1.5x10**19 Nm (Mw = 6.7) 破壊継続時間 T = 約 8s 破壊開始点の深さ H = 50 km 断層面積 S = 20km x10km 平均食い違い D = Mo /μS = 1.2 m (μ= 64GPa) 最大食い違い Dmax = 4.0 m 応力降下 Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 13 MPa ●解釈その他: 震央と深さから見て、潜り込むフィリピン海プレート(スラブ) 内部の地震と考えられます。今回の震源付近では、1905年6月2日の芸予地震(M7.2) や1949年7月12日のM6.2の被害地震が起こっています。今回の地震の規模はほぼ鳥取 県西部地震と同程度かやや大きめです。兵庫県南部地震のエネルギーの約半分(6 割)です。 <<補足>> メカニズムの変化を許した波形インバージョンによると、メカニズムの やや異なる2つのサブイベント(正断層)が求まります(図2)。 <<追加1>> 図1のすべり分布から、2つのアスペリティ(大きくすべる領 域)があり、それぞれ少し異なるすべり方向を持つように見えます。より信頼性の 高い分布については近地記録の解析によって得られると思われます。 <<追加2>> 1949年7月12日の地震の解析(図3) 気象庁の強震計記録を用いました。 ☆主な震源パラメータ (走向,傾斜,すべり角)=(170,65,-77) =>ほぼ今回と同じメカニズム 地震モーメント Mo=1.0x10**19Nm (Mw=6.6) =>ほぼ鳥取県西部地震と同じ規模 断層面積S=12kmx12km 食い違いD=1.0m 応力降下Δσ=14MPa =>今回と同程度 (文責:菊地・山中)