EIC地震学ノート No.94       Nov. 16, '00 (rev. 11/17,11/22)

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(改訂版)◆ --------------------------

  11月16日ニューアイルランド島近海の地震(Ms8.0)

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● 概略・特徴: 11月16日、日本時間午後2時前、ニューアイルランド島近海を
震源とするMs8.0の巨大地震がありました。USGSの速報震源は以下の通りです。

  発生時刻            震央        深さ     M
 11/16 04:54:56(UT)    4.0°S  152.3°E   shallow  8.0

●データ処理:IRIS-DMCから収集した11点の遠地実体波(P & SH)広帯域記録を用
いました。およそ百秒間の複雑な破壊過程の様相を呈しています。P波では初動から
120秒付近に顕著なパルスが見られます。S波では対応するパルスが不明瞭であるこ
とから、メカニズムの異なるサブイベントを示していると考えられます。今回の解
析ではこの部分をひとまず避け、前半の100秒のみに注目しました。

●結果:図1に結果を示します。主な震源パラメータは次のとおりです。

(走向、傾斜、すべり角)  (143, 85, 2)
 地震モーメントMo      1.3 x10**21 Nm
                        (Mw = 8.0)
  破壊継続時間 T        約 61 s
 深さH                 30 ± 10 km
 断層面積S             約150x30 km**2
 食い違いD = Mo /μS   4.8 m (μ=60GPa)
 応力降下Δσ           11 MPa

●解釈その他:浅い左横ずれ型の地震です。ビスマーク海のトランスフォーム断層が
動いたものと解釈されます。破壊は南東方向に進み、主要な断層すべりの範囲は約
150kmに及んだと推定されます。規模の割に津波がそれほど大きくないように思われま
すが、これはメカニズムが横ずれだったことによると考えられます。

(00/11/22補足)
  なお、初期破壊から2分後に起ったと思われるサブイベントは縦ずれ型の可能性が
あり、また3時間後のMs7.7の地震、及び、その後のM6〜7クラスの地震はすべて縦ず
れ型です。今回の横ずれ型巨大地震によって誘発されたと考えられます。これらにつ
いては後日別途ノートにまとめます。           (文責:菊地・山中)