EIC地震学ノート No.93s Oct. 6, '00

東大震研情報センター

◆遠地実体波解析(速報+補足1+2)◆ ----------------

  10月6日鳥取県西部の地震(M7.3)

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● 概略・特徴: 10月6日午後、鳥取県西部を震源とするMj7.3の地震があり、
境港で震度6強を記録したほか、中国四国地方の広い範囲で震度5や4を記録し
ました。気象庁の速報震源は以下の通りです。

  発生時刻      震央          深さ     M
 10/06 13:30(JT)     35.3°N  133.4°E   10 km  7.3(上方修正)

●データ処理: IRIS-DMCの12点の遠地P波広帯域記録を用いました。およそ2個
のサブイベントからなる多重震源の様相を呈しています。

●結果: 図1に結果を示します。ほぼ同じメカニズム(北西-南東圧縮)の2つの
サブイベントが得られました(イラスト)。主な震源パラメータは次のとおりです。

  震源時         13:30:17
 (走向、傾斜、すべり角)  (152, 88, -3)
 地震モーメントMo      9.6 x10**18 Nm
                        (Mw = 6.6)
  破壊継続時間 T        約7 s
 深さH                 10 km
 断層面積S             20x10 km**2
 食い違いD = Mo /μS   1.6 m (μ=30GPa)
 応力降下Δσ          8.5 MPa

●解釈その他: 震度分布や余震分布から北西南東走向の左横ずれ断層と考えられ
ます。応力降下は内陸地震の典型的な値です。地震モーメント(概ねエネルギーに
比例)は兵庫県南部地震の半分以下(2.5分の1)です。モーメントマグニチュードMw
は 6.6 で、気象庁のマグニチュードMjよりかなり小さめです。(=> 補足)
                                   (文責:菊地)




      << 補足その1:大地震のMjとMw >>                   (00/10/07)

 M7クラスの内陸の地震ではMjがMwより、0.2〜0.3ほど大きめに決まる傾向がある
ようです。この傾向は、誤差というよりは、見ている周期帯の違いに起因すると考
えられます。気象庁マグニチュードは概ね5秒より周期の短い地震動を反映するの
に対し、モーメントマグニチュードはより長周期の断層運動を反映するからです。
したがって、断層の拡がりや食い違い量を比較したり、津波の大きさとの比較にあ
たってはMwが適当であるが、建物の倒壊といった震動被害との相関はMjの方が良い
ように思われます。

< 比較例 >

         地 震              Mj    Mw
     -----------------------------------------
     1948/06/28 福井地震      7.1  6.8
     1978/01/14 伊豆大島近海地震  7.0  6.6
     1993/01/15 釧路沖地震     7.8  7.6
     1993/07/12 北海道南西沖地震  7.8  7.6
     1994/10/14 北海道東方沖地震  8.1  8.2
     1994/12/28 三陸はるか沖地震  7.5  7.6
     1995/01/17 兵庫県南部地震   7.2  6.9
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     <<補足その2:Mjの推定>>                      (00/10/16)

 今回の地震について、松代(MAJO)での広帯域地震計記録から周期 To=6s、減衰
定数h=0.5、倍率1の変位型地震計記録を合成し、水平動の最大振幅を基に気象庁
マグニチュードを計算してみました。結果はMj=7.1でした。同様の方法で、平成
7年兵庫県南部地震については松代の記録からMj=7.2が得られました(図2参照)。